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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第11章 原作編《仮免試験》


紫沫SIDE


「気になると言えばそうなのかもしれない。けど…」

それは、私の知らない焦凍君を夜嵐さんが知ってるかもしれないという思いからで。
そう口にしようとしたのに。

「俺はこっちを気にして欲しいんだが」

先を越された挙句に、裂けたタイツから覗く切り傷の上をやんわりとした手つきで撫でられて。
突然の出来事に言わんとしていた事は喉奥へと引っ込んで、ほんの数秒前の思考は瞬く間に葬り去られてしまった。

「ッ…!」
「控え室に着いたら先ず医務室って言ったよな?」

痛みはとうに引いていた筈が、わざとらしい程に柔らかくありながらも直接的に傷口を刺激してくるものだから。
鈍痛のようなくすぐったいような感覚に鳥肌の立つ思いがして。
悪戯に悪化させようとしてるんじゃないかと。
口よりも先に恨めし気な目で訴えかければ、真っ直ぐにこちらを見つめ返してくる瞳にどうしても私は弱くて、反論することが出来なくなっていた。

「ちゃんと、手当て、する…から…っ」
「そうしてくれ」

こちらが大人しく観念すれば素直に引いてくれたところを見ると悪意があった訳ではなさそうだけど。
もう少しやりようはあったのではと思いながら。
ざわざわとした肌触りの余韻を呼吸を一つ置く事で落ち着かせ、口にした通り手当てをするべく医務室へと足を伸ばす事にした。

「じゃぁ、行ってくるね」
「ああ。ここで待ってる」

医務室が何処にあるのかを聞く為に委員会らしき人物を見つけて近付けばポイントの回収をしていると言われ、先に返却を済ませてから教えられた場所へと向かった。
着いてみるとそこは脱落者の怪我人でごった返しているという状況で、見渡す限り一番の軽傷者である自分はもう少し後でもいいかとその場が落ち着くのを待つ事に。
けれど続々と運び込まれてくる怪我人は途切れる事はなく、なかなかタイミングを掴む事が出来ないまま時間だけが過ぎていた。
いっそ一度戻ろうかと思い至ったその時。

「まだ終わらないのか?」
「焦凍君?何でここに?」
「全然帰って来ねぇから気になって様子見に来た」
「ごめん。この通り医務室にかかる人が多くて。軽く消毒出来ればそれでいいんだけど」

手当てはまた後にしようかと言いかけたところを、手を掴まれ会議室と書かれたプレートの貼ってあるドアの中へと引かれるまま入っていた。



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