第11章 原作編《仮免試験》
紫沫SIDE
最近は"雪"を局所的に使うことばかり練習していたけど。
本来得意なのは、広範囲に渡って振らせること。
「これが、雪水さんの"個性"…ね」
「何、この威力っ!?まるで吹雪じゃん!?」
「けど、今の季節には相性最悪だわ」
確かに、8月下旬の外気温はまだまだ暑くて。
屋内で発動させた時に比べて周りへの影響は少ない。
「紙乃の言う通りだ。寧ろ涼しくて気持ちいいかも!」
「これで私達に勝てるとでも?私の"式紙"はこの程度で封じることなんてできないわよ」
「私の"個性"だって、こんなの関係ないんだから!」
「まだ始まったばかりですよ。結論を出すのは早いんじゃないですか?」
「本っ当に!生意気!!」
三度目の正直とでも言うように、いよいよ2人同時に攻撃を仕掛けてきた。
夏の季節に相応しくない"雪"が舞い荒れる中。
軽井さんの攻撃にはスノウガンを使って牽制しつつ避けては、折紙さんの折鶴は壁を作って防ぐけど躱しきれなかった数羽が肌に傷を作っていく。
そうして過ぎていく時間と共に私は冷気を身に纏い始めていた。
「そろそろ、動きが鈍くな…!?」
「なっ、んで!?」
「私の折鶴が…凍った…?」
"個性"を使い続けると起こる身体への反動。
自分の意思でやってることではないけど、図らずも折紙さんの"式紙"に対抗する術になった。
「そろそろ…は、こっちの台詞です。まだ続けますか?」
「折鶴が、効かない位、で……ぇ…」
「からだ、が…うごか…な…い……」
「徐々にだったから、なかなか気付かないものなんですね」
「ぁ…さ、むぃ……」
夏の気候のせいか、お陰なのか。
"雪"が体温を奪うのがとても緩やかだったみたいで、2人が自覚した時には手遅れな程に身体機能を麻痺させることが出来た。
ゆっくりと近付けば体を動かせないながらも息を吹きかけられた折鶴が飛んでくるけど、それが私の肌を傷付けることはもうない。
「念の為、足元固定させてもらいますね」
万が一を懸念して、地面と足元を纏った冷気で凍らせれば動かせない身体の逃げ場は限りなくゼロになる。
そこで漸く"雪"を止めた。
「ぁ…い、や……」
「こん、な…まだ…」
寒さから言葉を口にすることもままならなくなっているようだけど。
何を言いたいかは聞かなくてもわかった。
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