第11章 原作編《仮免試験》
紫沫SIDE
「貴女達に…教える道理はありません」
関係を明らかにしないのは癖に近いものだった。
こうして焦凍君に好意を寄せてる人に対しては特に。
「歳下のくせに…生意気っ!!」
戦闘に開始の合図なんてものはない。
雄英がいつも不意打ちのように事を始める理由がここにあったのかと。
日常的にそうした中で鍛えられていたから。
会話の最中に向けられた"個性"を警戒していない訳がなかった。
「あら、意外とやるのね」
先制としてこちら目掛けて投げられたのはただの石ころ。
の筈が、さっきまで私のいた地面が窪み石ころがめり込んでいるところを見ると破壊力はその限りじゃなさそうだ。
こんなのが当たってたら、ただの怪我じゃ済まないところだった。
「ちぇー、腕の一本位やれたと思ったんだけどなあ」
「伊達に雄英生じゃないってことね。でも、これならどうかしら?」
その言葉と共に、腰にぶら下げている千羽鶴を手に持って。
一見するとただの折鶴だけど。
どんな"個性"の持ち主かわからないから油断は出来ない。
「挨拶がまだだったわね。私の名前は折紙 紙乃(おりがみ しの)」
直後、息を吹きかけられた無数の折鶴が私目掛けて飛んできた。
流石に避けきれないと"雪"で壁を作るけど、数が多過ぎていくつかを防ぎきれず。
腕や脚を掠めて、服が裂け肌に痛みが走った。
「っ…」
「"個性"は"式紙"。私の操る紙は良く切れるから気を付けてね?」
「まだ名乗ってなかったっけ?私の名前は軽井 千重(かるい ちえ)。さっき見せた"個性"は"質量変化"ってやつ。さァ、私達2人相手にどう応戦する?」
試験の概要としてはボールをポイントに当てれば勝ちだけど。
どう考えても戦闘しながら当てるのは難しそうだ。
ただでさえ2対1の不利な状況。
でも、裏を返せばここで2人分のポイントを稼げれば一次通過ができる。
(焦凍君の事は気になるけど…そうも言ってられないか…先ずは目の前の問題をどうにかしなくちゃ)
味方が近くにいない事が幸いした。
(動けなくしてから当てた方が確実だよね…)
圧縮訓練では共闘を前提にしていたけど、それを重ねていく程に自分の"個性"が本来どういう時に力を発揮するのかを考えさせられて。
一つ試してみたい事が増えていた。
「お姉さん方、恨みっこなしですよ」
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