第11章 原作編《仮免試験》
紫沫SIDE
通過者100名という例年以上に限られた椅子の数に騒つく受験生を他所に、目良さんは続けて試験概要を告げ始めた。
「で、その条件というのが、コレです。受験者はこのターゲットを3つ。体の好きな場所、ただし常に晒されている場所に取り付けて下さい。そしてこのボールを6つ携帯します。ターゲットはこのボールが当たった場所のみ発光する仕組みで、3つ発光した時点で脱落とします。3つ目のターゲットにボールを当てた人が"倒した"こととします。そして二人倒した者から勝ち抜きです。ルールは以上。えー…じゃあ展開後、ターゲットとボール配るんで、全員に行き渡ってから1分後にスタートとします」
「展開?」
隣に立つ焦凍君が小さく声を漏らしたのとほぼ同時に、地鳴りのような音が聞こえると、天井と壁の間に隙間が出来始めているのが見えた。
会場の一室だと思っていたところは既に競技場の中だったらしく、その言葉通り展開図のように天井や壁が広がり目の前にはとても大掛かりなセットが姿を現す。
「各々、苦手な地形、好きな地形あると思います。自分を活かして頑張って下さい。一応地形公開をアレするっていう配慮です…まァムダです。こんなもののせいで睡眠が…」
そのセットは校内にあるUSJを彷彿とさせながらも、更に規模が大きく作り込まれていて。
目を奪われそうになりつつ、委員会の人が配るアイテムを手に取り手早く身体に装着する。
全員に配り終えれば1分後にスタートするのだから悠長にはしていられない。
その時、1-Aの皆がひと塊りになっているのを見つけた。
「焦凍君、皆がいる!あっち行ってみようよ!」
きっと意図して集まっているのだと思ったから。
先着順に通過すると言うことは、同校で潰し合うことはない。
寧ろ仲間同士手を組んで他校を相手にする筈だと。
「緑谷君!」
「雪水さん!轟くんも一緒だったんだね!良かった。丁度皆で行動しようって話してたとこなんだ!」
「フザけろ。遠足じゃねえんだよ」
「バッカ、待て待て!!」
「俺も大所帯じゃ却って力が発揮出来ねえ」
「轟くん!!」
折角皆のところに来たのも束の間。
爆豪君が我先にと駆け出し、切島君と上鳴君がそれを追って駆け出してしまう。
焦凍君も同様に何処かへと行ってしまった。
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