第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
唾液で塗れた口内からぐちゅぐちゅと音がする。
いつもより程近いところから聴覚を刺激してくる卑猥な音に、身体が火照って下腹部が疼いている気がした。
脳内は惑わされて解けることなく。
咥える際に外した視線が未だに私に向けられているなんて気付きもしない。
「紫沫…もう、いい」
役不足だと言われた気がして、確かな術を持たない私は大人しく身を引くしかなかった。
空っぽになった口の中と同じように心まで空いたような気分になる。
下を向いたままの顔を自力で上げることが出来ないでいると、頭に添えられた手に促されて見上げることになった先に見えたのは。
最中特有の熱を灯した瞳で、その熱が交わる視線を通して私にも伝染してきそう。
「勘違いしてねぇよな。そろそろ限界だ…紫沫の膣内(なか)でイかせてくれ」
焦凍君を翻弄しようなんて到底出来る訳がなかった。
私の方が翻弄されて、惑わされて。
引寄せられているのか、私が自ら寄せているのか。
正常でない脳から伝わる電気信号は意識とは関係なく働いて、私は焦凍君の上へと跨り言われた通りにソレを秘部の中へと招き入れる。
「っん、ぁ…」
互いに濡れた状態ですんなりと這入って来たソレは私が上にいる事でいつも以上に深く繋がって奥にまで先端が届いてる。
焦凍君と繋がっている悦びで奥がヒクついて。
下から注がれる視線で触れられてもいないに身体が鋭敏な反応を示して。
胸の高鳴りと共に絶頂感に襲われて。
「ぁっ、だめ…ッ!」
自分でも何が起きたのかわからなかった。
さっきまで起こしていた筈の上体は焦凍君の広い胸板の上に倒れ込んで小さく呼吸を繰り返している。
「まだ、挿れただけだぞ」
その声にも身体が反応して。
全神経が焦凍君を感じる為だけに機能しているかのよう。
「ごめ…少し、待っ…ァッ」
「待てるワケ、ねぇだろ」
性急に始まった律動はいつにも増して容赦なく。
全身を突き上げられているみたいで。
何度制止の声を掛けようとしても口から溢れるのは意味のない音ばかり。
逆にその音はいくら制止しようにも歯止めが利かず自力ではどうすることもできなくて。
デタラメに焦凍君の肩口へと口を押し当てて塞いでいた。
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