第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
密着する素肌と耳元で聞こえる吐息に、これまでにない位焦凍君の存在をすぐ傍に感じて心拍数が最大値で鳴り続けている。
必死に声を嚙み殺しても、激しく何度も奥を突かれては絶え間なく雪崩れ込んでくる快感の波を押し殺す事はできなくて。
遠慮なく最深部まで挿し入ってくる腰つきになす術なく限界へと引き摺り堕とされそうになったその時。
「紫沫…奥に、出すぞ」
色を含んだ獣が唸る様な低音が鼓膜に直接響いた。
心臓が飛跳ねるのと連動して内側がキツく収縮する感覚に襲われ。
「ふっ…ンん゛…っ!」
「っク…!」
一際質量を増した存在が限りなく奥を求めて欲を吐き出す感覚をしっかりと身体に教え込まれながら、同時に迎えた先の果て。
互いに息が上がって、肌の熱は果たしてどちらのものなのか。
おもむろに後頭部へと回された手が髪を梳くように撫でてくるのがとても心地いい。
「紫沫…愛してる」
「私も…愛してる。焦凍君」
顔を上げられないまま、耳元で囁き合った想いが冷め切らずにいた熱を上げて。
もう一度…。
そうして何度も求め合って。
時には溺れるほどに激しく。
時には蕩けるほどに甘く。
渇くことのない愛欲の中で共に深く沈んで。
「しょ、ぅと…く…んっ」
「紫沫…ッ」
気付けば日付を跨いでいた。
後数時間もすれば陽が昇り、夏休み最後に待ち受ける最大の試練に挑むこととなる。
「身体は大丈夫か?」
「大丈夫。少しずつ体力上がってきてるんだよ?」
私自身も焦凍君を求めてたから。
疲労感よりも充足感の方が大きかった。
本当なら自室に戻るべきなんだろうけど、離れられなくて。
一つの布団の中で抱き合うようにして身を寄せてる。
「訓練、頑張ってんだな」
「それは焦凍君もね。"個性"同時発動出来るなんてびっくりした」
「まだ身体の動きは鈍っちまうが」
「でも凄いよ。それに、凄く綺麗だった」
「そんな風に言うのは紫沫位だ」
「そんな事、ないと思うけど…」
周りには一体どんな風に見えているんだろうかと、考えを巡らせているところに眠気が訪れていた。
「そろそろ、寝るか」
「うん…」
一度視線を合わせて。
瞳を閉じれば降り注がれる優しい口付け。
「おやすみ」
「おやすみ」
今度は微睡みの中へと向かう為、そっと瞳を閉じた。
.