第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
まだあまり言うことの聞かない身体で、ゆっくりと布団の上に座る焦凍君へと這い寄ると。
いつの間に服を脱いだのか、私と同じ一糸纏わぬ姿をしていた。
目の前でこうして間近で見るのは二度目となる男性の象徴は、獰猛と言う言葉が脳裏を過ぎる程の主張を示して。
以前見た時よりも更に強暴な印象を受けるけど…
まだ見慣れぬからだと、そろりと手を伸ばし腫れ物に触る気分で包み込んだ。
一度経験したことを忘れぬように、手だけでなく唇も寄せ触れるだけの口付けを落とす。
焦凍君が私にするのを真似するつもりで、舌を形になぞらせて何度も上下させた。
手は添えるだけで口にばかり意識が集中する。
四つん這いに近い体勢で、生まれたままの姿で。
それはまるで猫の毛繕いに似ていると頭の片隅でチラリと思った。
「っ…は、ッ….」
頭上で聞こえてきた吐息に意識を引っ張られて何気なく見上げた視線。
こちらを見下ろしてくる伏せ目がちなオッドアイと重なった。
(ずっと見られていた…?)
そう思った瞬間、今自分がしている事やしている格好に何だか端ない姿を晒しているのではと羞恥心が沸き起こる。
なのに、重なる瞳から逃れる事が出来なくて鼓動だけか早鐘を打って警鐘を鳴らす。
「いい眺めだな…その顔も、その格好も…凄ぇ、ソソる…淫がましい紫沫」
警鐘だった鼓動が違う意味の早鐘を打ち始めた。
焦凍君の艶やかさを含んだ低音が、一言一句を諭してくる囁きに催眠をかけられているみたいで。
それを耳にした私はさっき感じたばかりの羞恥心が迷子になって、頭の中が告げられた言葉に惑わされていく。
決して何かを命令するような発言ではないのに。
唆られるなら、もっと淫らに…
焦凍君を翻弄するくらい厭らしくなりたい。
「っウ…ぁ…」
舌を這わせるだけだったソレを一口で。
口内が一杯になるまで咥えると焦凍君から唸るような声が漏れた。
体臭とは少し違う独特な匂いが口腔から鼻腔へと抜け、まるで嗅覚を支配してくる様に蔓延していく。
心なしか前にはしなかった正体不明の味もして、それに舌が味覚反射を起こしたのか口の中で唾液が溢れている。
主導権は自分にある筈なのに、影響ばかりを受けていてはダメだと。
当初の目的を果たす為、舌を這わせる動きを模して、ゆっくりと上下に舐めとる様に二度目の口淫に身を沈めた。
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