第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
一口含んだミルクが喉を通り切ってから、焦凍君が口を開いた。
「…もしかしたら、親父が関わってた事件かもしれねぇ」
「え?!エンデヴァーもいたの!?」
「多分な。当時の記憶が確かな訳じゃねぇからすぐには思い出せなかったが、俺が小せぇ時にそこそこ大きい事件があったってのを聞いた事がある」
「そっか…エンデヴァーにも救けられてたんだね…」
「クソ親父だが…仮にも、トップヒーローだからな」
「そうだね…」
そこで再び焦凍君は考える素振りを見せると。
「けど、変だな。未だに行方不明なら、どこかでその情報を耳にしててもおかしくねぇんだが…」
「それは…捜索はもう打ち切りになってるから」
「打ち切り?」
「「累加家」の本家の人が警察にこれ以上探さないでいいって言ったんだよ。少し特殊な"個性"だからって昔はそれなりに力のある家系だったから変に顔が効いて…」
「その従姉妹の親は素直に聞き入れたのか?」
「…ううん……お姉ちゃんの両親は、敵に連れ去られる私達を守ろうとして………犠牲に…なったって……」
「そうか…」
「…うん。それでも私の両親は続けようって何度も抗議したらしいんだけど、全然聞き入れてもらえなかったみたい…」
「何かワケありそうだな。そこまでして打ち切りてぇ理由ってのが」
「それは……数年探しても見つからないならもう敵の手に堕ちていてもおかしくない。「累加家」が敵になるなんて恥晒しだって。それに、これ以上敵と関わって自分達が狙われでもしたらどうするんだって…」
「…胸くそわりィ理由だな」
私自身、当時はまだ幼かったからその意味をちゃんと理解できていなかったけど。
今思い返してみるとヒドい言い分だ。
本家にしてみれば「累加家」の血を引いてはいるものの、嫁ぎ先の幼子一人どうなろうと自らの保身の為なら構わないということだろう。
「だから、本家とは絶縁状態になってて。でもね、お父さんは密かに探してたみたい。その為には個人で活動した方がいいってサイドキックを辞めたって言ってた」
「手掛かりはねえのか?」
「わからない…私をなるべく関わらせたくなかったのか、何も教えてもらえくて。わかるのは年齢が私より5歳上ってことと、名前位かな…」
「なんて言う名前なんだ?」
「紫晶…紫晶お姉ちゃんって呼んでた」
.