第2章 中学生編
紫沫SIDE
席替えがあったあの日から1ヶ月が経とうとしていた。
やっぱり席の離れた彼に話しかけにいくきっかけを掴めずに、彼とは殆ど話すことがなくなった。
勿論朝顔を合わせれば挨拶はするけど、それくらい。
まるで、1学期の頃に戻ったみたいな感覚に陥る。
(夏休みの時の事が嘘見たい…)
あの時はあんなにも近くにいたのに。
ふと、彼に抱き締められたんだという事を思い出して、少し恥ずかしくなったけれど。
でも、現状と比べたら恥ずかしさよりも寂しさが私を襲う。
「紫沫、この後先生に呼ばれてるんだけど、帰りどうする?」
「んー、それってすぐ終わる?」
「多分すぐ終わるとは思うけど」
「なら、待ってようかな。別に急いで帰る用事もないし」
「おっけ!ソッコー終わらせてくるからね!」
「いやいや、無理やり早く終わらせようとしなくていいよ?」
なんて、幼馴染と話していると視界の端に彼が映った。
思わずそちらを見つめてしまう。
「そう言えば、最近全然話してるの見ないけど、喧嘩でもした?」
「そんなんじゃないよ。ただ、話すことがないだけ」
自分でそう言って、なんだか悲しくなる。
幼馴染とはこんなにも簡単に他愛ない会話ができるのに、なんで彼とは出来ないんだろう。
「…なんか、紫沫と紅白頭君って不思議な関係してるよね」
「どういうこと?」
「いや…近くにいることが当たり前過ぎて、いざ離れたらどう近づいていいのかわからないみたいな感じがしたから…なんて言ったらいいのかな…」
「んー…近くにいたのは偶然で、離れたのは必然なんだからそんなんじゃないと思うよ?」
実を言うと、幼馴染が言った言葉はすごくしっくりくる気がしていた。
でもそれは、私がそう感じているだけで、彼はきっとそんな風に感じてはいないから。
だから、きっと違う。
「あ、そろそろ先生のとこ行ってくる!」
「うん、行ってらっしゃい!」
そう言って、幼馴染は教室を出ていった。
すぐ終わるとは言ってたけど、ただぼんやりしているのも暇だから読みかけの本の続きを読みながら待つことにして。
文字の羅列を目で追っていると徐々に瞼が重くなっていく。
どんどん意識が薄れていくのを止められなくて。
気付かないうちに私はそのまま眠りに落ちていた。
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