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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》


紫沫SIDE


「紫沫…」

心地の良い低音が耳に響いた後、頭の上に何かが触れる感覚がした。
それは以前にも感じたことある気がして。

「ねぇ…焦凍君」
「何だ?」
「入学してすぐの頃にマスコミ騒動があったよね」
「…ああ」
「その時…食堂で、救けてくれたのは…焦凍君…?」
「気付いてたのか…?」
「ううん…あの時は誰だかわからなかった。でも、もしかしたらって…」
「そうか」
「いつも救けてくれて、ありがとう」
「あれは…紫沫の姿を見て、身体が勝手に動いちまってた…離れても想いを消すことが出来なくて…雄英で再会してからは更にその想いを抑えられなくなっちまってた。俺は、紫沫のことが…」

不意に声が途切れると、頭に添えられた手に促されて顔を見上げれば。
色彩の違う双眸が真摯にこちらを見据えて、一言一句確かめる様に言葉を紡いでいく。

「ずっと、好きだったんだ」

胸が苦しくて、切なくて、嬉しくて…
言葉に表しきれない感情が溢れて目頭が熱くなる。

「私も…焦凍君のことがずっと…好き、だったよ」
「結局、俺が泣かせちまったな」

今度は堪えきれず雫が零れ落ちていた。
焦凍君の唇が目元に寄ってきて、一つも零させないと掬い取っていく丁寧で柔らかな感触に。
雫だけでなく、私の想いも全て受け止めてくれてる様な気がした。

「焦凍、君…」

そう呼べば目元にあった唇は離れて再び交わる視線に。
惹き寄せられるかの如く距離が縮まって。
その距離がゼロになるのと同時に瞳を閉じた。
背の高い焦凍君に触れる為に少しだけ上がった踵は暫く降りることはなくて。
誰が来るかもわからない場所で、言葉だけじゃ足りない想いを。
互いの熱を感じ確かめる事で伝え合った。
溶け合う熱がどんどん欲を掻き立てて、まだ足りないと求めて。

「紫沫…俺の部屋、来るか?」

耳元で囁く声音にも熱が灯っているのかと思った。
いつにも増して色気の含んだ低音が耳だけでなく全身に響き渡る。
熱に浮かされた頭の中はぼんやりとしていて。
私も焦凍君の耳元へと口を寄せると。

「いく…」

そう答えていた。
もう一度だけその場で熱を確かめ伝え合ってから。
その場を後にした私たちは部屋の扉が閉まると同時に縺れるようにして互いを求め。
冷めない熱に、本能のまま溺れていった。


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