第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
もう何個目になるのかわからない雪球を装填しようとした時。
体育館入り口からここにはいない人の声が響いてきた。
「そこまでだA組!!!今日は午後から我々がTDL(ここ)を使わせてもらう予定だ!」
B組担任のブラドキング先生だ。
後ろからB組の面々も揃って体育館の中へと入ってきている。
そんな時間になっていたのかと、訓練を止めて体育館入り口へ向かうことにして。
声の聞こえるところまでくると、仮免試験の話をしているようだった。
「だから、A組とB組は別会場で申し込みしてあるぞ」
「ヒーロー資格試験は毎年6月・9月に全国三か所で一律に行われる。同校生徒での潰し合いを避ける為、どの学校でも時期や場所を分けて受験させるのがセオリーになってる」
確か仮免試験は半数が落ちると誰かが言っていた。
とても狭き門なのだ。
「ホッ…直接手を下せないのが残念だ!!」
「ホッ、つったな」
「病名のある精神状態なんじゃないかな」
何やら物間君がつっかかってきていたみたいだけど、仮免では別会場らしいから気に止めるほどのことではなさそうだ。
それよりも、物間君のコスチュームが少し気になる。
何故動きにくそうな燕尾服なんだろう。
確かに普段あまり着るような服じゃないからコスチューム感はあるのかもしれないけど。
とそこまで考えて、もし焦凍君が燕尾服を着たら…という事を想像してしまった。
多分、凄く似合う。
想像でしかないけど、身長高いしスタイルいいから似合わない筈がない。
そんな場違いなことを考えている間に会話は進んで、相澤先生の声が耳を掠めたのをキッカケに我に返る。
「1年の時点で仮免を取るのは全国でも少数派だ。つまり、君たちより訓練期間の長い者。未知の"個性"を持ち、洗練してきた者が集うワケだ。試験内容は不明だが、明確な逆境であることは間違いない。意識しすぎるのも良くないが、忘れないようにな」
危うく聞き逃すところだった。
とても大事な話だ。
訓練期間と言われると、1学期中に"個性"を使っての授業にほぼ参加できてない私は断トツで短い。
これは相当気合を入れていかないと半分の内の一人になる最有力候補だ。
もちろん落ちる方の。
改めて気を引き締めて、仮免までの残り日数。
新たな技習得に併せて体力強化もしつつと鍛錬に費やす日々を送るのだった。
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