第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
朝食を終えた1-Aは昨日に引き続き体育館γで圧縮訓練を行うとのことだった。
サポートアイテムが出来上がるまでの間は兎に角"個性"伸ばしをする事に。
倦怠感と戦いながらもなんとかその日の訓練を終えて。
夕食後に共有スペースのソファで一休みをしていると。
夏の暑さ対策と糖分摂取の目的で各寮の冷凍庫にアイスの差し入れが入っていると聞いて、皆で有り難く頂くことにした。
「雪水はアイスどれにするー?」
「んー、バニラのやつにしようかな」
いくつか種類のある中でスティックタイプのを選んだ。
冷たくて甘くてとても美味しいのだけれど。
疲れからかとてつもなく眠い。
少しずつ口には運んでいるつもりだったけど、思いの外進んでいなかったようだ。
「紫沫、アイス溶けてるぞ」
「ぅん…」
「大丈夫か?」
「ぅん…」
隣に座っていた焦凍君が気にかけてくれているのにも意識半分にしか聞いてなくて。
アイスが溶けて持っている手に垂れそうなことに気付かなかった。
「危ねぇ」
アイスを持っている方の手首を掴まれ少し引っ張られる。
焦凍君の顔がアイスに近づいてくると、そこを舐められた。
既に手にも垂れてしまっていたのか舌が指を這う感覚がする。
「くすぐ、ったい…」
「じっとしてろ。また垂れちまう」
「んっ…」
一度こちらに向けられた視線と言葉に従うことしかできなくて。
されるがままに溶けたアイスが舐め取られて行く。
たまに指をかすってる気がして、冷たい舌の感触がした。
「しょ、ぅとくん…っ」
「残り、食えそうか?」
「…あげる」
眠気が勝ってもう食べられそうになかったからそのまま全部食べてもらうことに。
私の手の中には木の棒だけが残っていた。
「…ありがとう」
「おお。ここで寝ちまいそうだな。部屋まで送る」
そう言われて無言で頷いていた。
皆に「おやすみ」と小さく一言告げてから焦凍君に引かれる形でその場を後にした。
「…ここ共有スペース、だよな。緑谷」
「…そ、その筈だよ。上鳴くん」
「てか、雪水の反応がエ…ごふっ」
「峰田、黙って」
「紫沫ちゃん、大丈夫かしら?」
「とてもお疲れの様でしたわね」
「送り狼になったりして…」
「瀬呂ォ、それは流石にダメだろー!」
「流石にな!!」
「な!!!」
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