第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
寝起き特有の微睡みの中、いつもの目覚ましに代わって聞こえたのは穏やかな低音。
「紫沫、朝だ」
「ん…からだ、重たい…」
男子棟の一室で朝を迎えた私は、昨日の訓練…ではなく昨夜の行為が尾を引き身体のダルさが抜けきれていなかった。
その為か頭がスッキリしなくて、なかなか眠気がとれない。
「…次からは気をつける」
「おねがいシマス…」
そろそろ朝ごはんの時間が迫っていると、昨日から始まったばかりの圧縮訓練を休むわけにはいかず。
焦凍君からおはようのキスが降ってきて、その心地良さに微睡みに負けそうになったけど。
何とか身体を起こして一階へと向かう。
途中、エレベーターが二階で一度停止すると緑谷君の姿が見えた。
「あ、おは…よ!?」
「おはよぉ…」
「え!?ここ、男子…えっ!?」
「緑谷、乗らねぇのか?」
「いや、ちょ、何で雪水さんがここに!?」
緑谷君の驚いた顔とそれなりに大きい声で目が覚めて。
本来ここは自分がいるべき場所じゃないことを理解した。
「あっ、えと…」
「俺の部屋で動けなくなっちまったから、泊めたんだ」
「…そう、だったんだ?」
「つ、疲れちゃったみたいで…」
「圧縮訓練の疲れがそんなに…」
「もう大丈夫だから!取り敢えず、下に降りよう?」
いい感じに解釈してくれたので、これ以上話を広げない為にも先を急かす。
一階に降りれば先ずは男女で分かれている洗面所に向かい二人とは別れて。
既にそこには先客の姿があった。
「皆、おはよ」
「雪水、おはよ」
「おはようございます」
「おはよう、紫沫ちゃん」
朝の支度を一通り済ませて、耳郎さん・八百万さん・梅雨ちゃんと共に朝食が用意されている机へと並んで座った。
一階は中庭を挟んで男女で別れてはいるものの、特に拘りはなく、自由に行き来することが出来る。
だから昨日は焦凍君の隣に座って食事をしたけれど、ついさっきの事もあるしで今朝は女の子達と共にした。
寮での食事は食堂で用意されていて、これからほぼ毎日クオリティの高いご飯が食べられるのかと思うと贅沢な気がするけど。
訓練や授業がない日はシェフもお休みだから自分達でなんとかするようにとのこと。
寮にキッチンがあるのはその為で、自炊することもヒーローには必要なことだからとかなんとか。
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