第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
「__…、__っ」
誰かに呼ばれている気がする。
「__」
この声は…焦凍君…?
「紫沫…」
「しょぅ…と…く」
「気が付いたか?」
「…ん…?」
頭の中がぼんやりとしている。
視界もあまりはっきりしていない。
でも、感じる温もりはわかる。
私の大好きな人だ。
「焦凍…くん…」
「大丈夫か?」
「…好き、だよ」
何故か上手く身体に力が入らなくて。
頬に手を伸ばすのがやっとで。
「キス、して…?」
私からは出来ないから。
「……紫沫が、煽ってきたんだからな。責任、取ってもらうぞ」
「…?」
一体何を煽ったのか。
責任とは何に対してなのか。
そのどちらもわからないけれど。
触れ合う唇はとても心地が良くて…
「…っ、ん!」
口内へと侵入する舌。
中を圧迫する存在感。
「んっ、んん…ッ」
卑猥な音が聴覚を刺激し出す。
朧げな意識は感覚も鈍っていたらしい。
触れるだけでは留まらない深い口付けと。
中に入ったままだったソレが大きさを増して。
奥を突いてきたことで、衝撃を覚えた。
「っぁ、ゃ…待っ、ァッ…」
口を塞ぐ柔らかく湿った蓋が外れると、甘い声ばかりが放たれて。
マトモに言葉を告げることは叶わなかった。
「可愛いことする紫沫が悪い」
その言葉を最後に、脳内は正気を失い。
次から次へと襲い来る欲情の渦に。
引きずられるようにして溺れていった。
何度達したかなんて到底わからなくて。
ひたすら焦凍君の熱を刻みこまれ続けて。
全てが終わった頃には。
起き上がることままならなかった。
「……何で、そんな平気そうなの?」
「紫沫はもう少し体力つけた方がいいぞ?」
ヒーローになる為に必要不可欠なことだからそれに関して否定はできないけれど。
こんな状態になった原因を作った本人に言われると、素直に受け止めることが出来ない。
「…焦凍君の体力オバケ……」
「俺はお化けじゃねぇ。ちゃんとここにいるだろ」
何かがズレてる。
しかしその表情から冗談ではなく本気である事が伺えるけど。
それを訂正するだけの体力はとう尽きていて。
ここにいると証明する為に抱き寄せられたのがとどめとなり。
包み込まれる温もりに、限界だった身体はその場から一歩たりとも動けなくなっていた。
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