第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
爆豪SIDE
あれは入学してすぐの授業だ。
いきなり近付いてきて"個性"発動させて去って行ったモブ女が何故か頭から離れなかった。
その時に見た光景が脳裏に焼き付いて。
それと同時にモブ女の姿も焼き付いて。
それ以降、視界の端にチラチラと入ってくるそいつに苛立ちを覚えたこともあった。
「ただの同中ってわけじゃアねェな」
「…そうだね」
体育祭の日、治癒女が見たことのない顔をしていて。
その顔をさせてる奴が誰かなんて考えるまでもなかった。
視界の端に映るあいつが目で追っている奴がいることに薄々勘付いていた上で。
決定的と言える場面にでくわしたからだ。
それでも涙を流していたのを見た時は、何がそこまでさせるのかはわからなかった。
その顔をさせている張本人の半分野郎はクソナードにばかり意識を向けていて周りを何一つとして見ていなくて。
だから決勝戦直前、当てつけのようにあいつを泣かせるなと言ってやった。
「中学の時にね、少しの間だけど付き合ってた…」
「そういう事かよ」
「うん…ずっとね、見てた…好きだった。気持ちを消せなくて、忘れられなくて…体育祭の時は付き合ってなかったけど、それでも焦凍君のことを想わずにはいられなかった」
体育祭の後から2人の距離感に違和感を覚えた。
何かあったことは明白だったが、クラスの連中が騒ぎ出したことに興味はなかった。
そんな最中期末試験で雪女のもう一つの"個性"を目の当たりにして。
以前あいつが頭から離れなかったのは"個性"に違和感を持ったからかもしれないと思った。
雄英のヒーロー科にいるやつの"個性"にしてはあまりにも弱々しいと。
改めて目の前の光景に俺の目は釘付けになっていた。
その後すぐに2人の関係がはっきりしたものになったが、そんなことは俺にはどうでもよかった。
「メンドくせェ」
雄英でトップになると決めたのだ。
No.1ヒーローに…オールマイトをも超えるトップヒーローになる為にも。
俺の前に立ちはだかる壁は全てブチ壊す。
その壁の1人が半分野郎で。
その隣にいる雪女も見過ごすことが出来なかった。
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