第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
訓練の後に相澤先生の言っていた校舎一階にある開発工房へと向かった。
コスチュームの改造ではなく新たなサポートアイテムの相談の為に。
そこには体育祭で見た初目さんの姿があって何だかとても興味深そうにこちらを見ている。
何でも私の前にもコスチュームの改造の件で数人来ているらしく、その度に首を突っ込んできているのだとか。
「で、雪水さんは新しいサポートアイテムが欲しいと」
「はい。ちょっと新しい技を考案中でして…」
「ふむふむ、それでそれで」
「私の"個性"で周りを気にせず使う為なんですけど…」
一通り訓練中に思いついたことを説明し終えたところで、発目さんがしっかりと会話に参加していたことに気付いた。
「なるほど…先生!私に少し時間を頂けませんか!?今いい案が思いついたんです!」
「全くお前は…どちらせよ少し時間をもらわないといけないことは確かだけどね。というわけだから、二日後にまた来てくれ」
「わかりました。宜しくお願いします!」
無事サポートアイテムの依頼を終えて寮に帰り、シャワーを浴びて部屋に戻ると丁度夕飯の時間で。
一階の共有スペースに向かえば同じタイミングで来ていた焦凍君の姿を見つけて、折角だしと隣に座らせてもらった。
「焦凍君は何かコスチュームの改造とかする?」
「ああ。さっき依頼してきた」
「もしかしてすれ違いだったのかな?私もさっき行ってきたところだよ」
「そうなのか?」
「うん。また二日後に行くんだけど」
念の為予定を入れておこうと携帯を取り出すとメッセージの通知が表示されていて。
送り主の名前に一瞬その手が止まった。
「どうした?」
「あ、いや、何でもないよ?」
つい数時間前に思い出したのはもしかして予感だったのだろうか。
送り主は爆豪君からで、食事が終わったら寮の外に来いと。
私の予想は見事外れていたらしく、連絡をしていなかった事を激しく後悔した。
「…」
その画面が隣に座る焦凍君に見えていたとは知らぬまま。
どう言い訳をしようかと考えを巡らせたことで、すっかりサポートアイテムの話をしていたことも忘れて。
会話をする余裕もなく、もくもくと夕食を済ませていた。
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