第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
私は皆への影響を考えて距離を置く為に、少し高めに形成されたコンクリート台の上にいた。
「君ハ広範囲二発動スルタイプダッタナ」
「はい。でも周りに影響のある"個性"なのでもう少し調整出来るようにしたくて…」
まだまだ未熟な私は一人だけで敵を捕まえることなんて出来ない。
多様多種な"個性"のある中で多人数相手にした時、自分に不利な"個性"があったら詰んでしまうから。
共闘することを考えた時に広範囲ばかりでは味方も巻き込んでしまいかねないと思っていた。
必要に応じて協力し合える技が必要だと考えてはいるのだけれど。
「範囲ヲ限定シテ発動スル事は可能カ?」
「一応は…でもまだあまり得意じゃないというか…」
「ソレナラバ今日ハ"個性"伸バシヲスル事ニシヨウ」
急がば回れという事なのだろうか。
制御が出来るようになったとはいえ、自由自在に扱うことはまだ出来ていなかった。
もしかしたら今まであまり使っていなかったから経験不足が関係しているのかも知れない。
そう思って"個性"伸ばしを始めた時だった。
「やってるねぇ、皆!」
「!」
体育館入り口にオールマイトの姿が。
ここからは距離が離れているから何を話しているのかまでは聞こえないけど。
また別の場所から、こちらは距離が離れているのにも関わらずはっきりとした声が聞こえてきた。
「久々に暴れるとスッキリすらァ。エクトプラズム!!死んだ!!もう一体頼む!!」
「爆豪君は相変わらずだなぁ」
そう言えばあの事件のことを話すと言って全く連絡を取っていなかった事を思い出す。
特に何も言ってこないからもう気になってないのかも。
「やァ、雪水少女!」
「オ、オールマイト!?」
考え事をしていたから近くに来ていたことに気付かなくて。
慌てて"個性"を止めた。
「ここはとても寒いな。"個性"の影響かな」
「はい。広範囲に使えるんですけど、その分周りへの影響があって…」
「雪の"個性"か…そうだね。少し遊び心を持ってみるのもいいかもしれないぞ!」
「遊び心…ですか?」
必殺技に遊び心とは一体…
結局それ以上のことは何も言ってくれず、オールマイトはこの場を去っていった。
どうやら生徒一人一人にアドバイスをして回っているようだ。
.