第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
「順を追って話すよ。ヒーローとは事件・事故・天災・人災…あらゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事だ。取得試験では当然その適性を見られることになる。情報力・判断力・機動力・戦闘力。他にもコミュニケーション能力・魅力・統率力など。多くの適性を毎年違う試験内容で試される」
「その中でも戦闘力はこれからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する」
「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有している事になるんだよ」
高い戦闘力…雄英に入るまでは意識することなんてなかったけど。
本来の"個性"を取り戻した今なら。
相澤先生の言葉にあった可能性をしっかり自分のものにしていかなければ。
「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ…飯田クンノ"レシプロバースト"」
「!」
「一時的ナ超速移動。ソレ自体ガ脅威デアル為、必殺技ト呼ブニ値スル」
「アレ必殺技で良いのか…!!」
「成る程…自分の中で「これさえやれば有利・勝てる」って型をつくろうって話か」
「そ!先日大活躍したシンリンカムイの「ウルシ鎖牢」なんかは模範的な必殺技よ。わかりやすいよね」
「何も直接的なダメージを与えることだけが必殺技じゃないって事ですね」
「そういうことよ!」
入寮したら睡さんとはあまり会えないと思っていたけど。
こんなにも早く、それも先生として顔を合わせられたことでより一層訓練に励めそうだ。
「中断されてしまった合宿での「"個性"伸ばし」は…この必殺技を作り上げる為のプロセスだった」
「!!」
「つまりこれから後期始業まで…残り十日余り。夏休みは"個性"を伸ばしつつ、必殺技を編み出す——…圧縮訓練となる!」
十日余りという期間は長いようで短い。
新しい技を編み出すのも簡単なことじゃない。
「尚、"個性"の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良も並行して考えていくように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ。準備はいいか?」
本当に相澤先生は生徒を奮い立たせるのが上手い。
そんな風に言われたら誰だって…
「「「——…ワクワクしてきたぁ!!」」」
ほらね。
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