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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第2章 中学生編


紫沫SIDE


気になることは実はもう一つあった。
初めて彼を見た時はすぐには気付けなかったんだけど、見つめている内にその違和感に気付いた。
本来肌色である皮膚が変色し爛れた左目を囲む火傷の痕。
まさか、その経緯までもを聞けるとは思っていなかったけど。

「その火傷、もう痛くないの?」
「5歳位の時のだ。今は痛くねぇ」
「…触ってもいい?」
「…ああ」

少しの間その火傷痕を見つめて、ゆっくりそこに手を伸ばした。
指先からケロイド特有の少しザラッとした感覚が伝わってくる。
きっと彼は同情とか情けとかそういうのは求めていない。
私のこれもきっとそんなものじゃない。
ただ、その指先から伝わってくる感覚に胸が締め付けられて、苦しくて、痛くて…
多分それは彼の背負ってるものの大きさに触れた気がしたから。

「雪水…泣いてんのか?」
「へ…?」

自分でも気付かないうちに涙が溢れていた。

「あ、ごめん…これは違くて…すぐに止まるから…」

涙を拭おうと慌てて彼に触れていた手を引こうとしたら、その手を掴まれた。

「轟…君?」
「…」

彼は無言のままその手を少し引っ張って、私のことを抱き寄せた。

「泣くな、紫沫…」

そう言うと、彼の抱きしめる腕に力がこもって。

「ごめんね…私が泣くなんて狡いよね…」

きっと泣きたいのは彼の方なのに。
ずっと重たいもの背負って、1人で抱え込んで。
きっと彼はこれから先もそれを1人で抱え続けて行くんだ。

(私に出来ることがあるのなら、少しでもそれを軽くしてあげたい…)

それは口に出して言うことは出来なかったけど、強く心の中でそう思った。
私が落ち着くまで彼はずっと抱き締めてくれていた。
気が付けば辺りはすっかり明るくなっていて、どれくらいここにいたんだろうか。

「…轟君、もう大丈夫」

そっと彼の胸に手をあて、体を離すと。

「目少し腫れてんな」

彼は右手で私の目元に触れて、その手は冷たくて気持ちよくて。

「冷ましてくれてるの…?」

すぐに彼の"個性"だと気が付いた。

「多分、泣いたのは、俺のせいな気がするから」

違う、これは私のエゴなのに。

「轟君のせいじゃないよ。でも、気持ちいいからもう少しこのまま…」
「ああ」

少し、甘えてしまった。


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