第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
「ねぇ、轟くん」
「何だ?」
「あのカーテンの色って…」
「なんかあんのか?」
「いや、えっと…落ち着いた青緑色だね」
「そうだな?」
焦凍君と緑谷君が扉の近くでそんな会話をしていた事には気付くことなく。
披露大会トリとなる部屋へと続いた。
「じゃ最後は八百万か!!」
「それが…私、見当違いをしてしまいまして…皆さんの創意溢れるお部屋と比べて…少々手狭になってしまいましたの」
終にやってきたのは。
天蓋付きの豪華なベッドが面積の7割近くを占めている部屋だった。
「でけえー!!狭!!どうした八百万!」
「私の使っていた家具なのですが…まさかお部屋の広さがこれだけとは思っておらず…」
「クローゼットと同じ広さって言ってたもんね…八百万さんの家に行ったら迷子になりそう…」
2名の生徒を除いた全部屋のお披露目が終わり、一階の共有スペースに戻ってくると早速部屋王を決める投票が行われた。
「えー皆さん投票はお済みでしょうか!?自分への投票はなしですよ!?それでは!爆豪と梅雨ちゃんを除いた…第一回、部屋王暫定1位の発表です!!得票数5票!!圧倒的独走単独首位を叩き出したその部屋は——」
途中参加で男子部屋は殆ど見れなかったし、女子部屋の中から誰かをというのも決められなくて。
初めて訪れたにも関わらず寝入っていた焦凍君の部屋に、一票を入れた。
「砂藤ーー力動ーー!!」
「はああ!!?」
「ちなみに全て女子票!理由は「ケーキ美味しかった」だそうです」
「部屋は!!」
「てめーヒーロー志望が贈賄してんじゃねー!!」
「知らねーよ。何だよ。すげえ嬉しい」
部屋王の主旨が変わっているような気もするけど。
自分の投票理由も然程変わらないことに、黙ってその場を見届け。
これにてお部屋披露大会は幕引きとなった。
「終わったか?寝ていいか?」
「いいんじゃないかな?」
「うむ!ケーキを食べたので歯みがきは忘れずにな!」
「終わるまで待ってたんだ」
「あっ。轟くん。ちょ待って!デクくんも、飯田くんも…それに切島くん、八百万さん。ちょっといいかな」
お茶子ちゃんからそう声を掛けられ、名前を呼ばれた皆は寮の外へと行ってしまった。
少し気になりつつも、手付かずの段ボール箱を処理しなくてはならないと。
自室に戻る為、エレベーターに乗り込んだ。
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