第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》
紫沫SIDE
21人分の食料というのは結構な量で、帰り道は皆両手いっぱいに袋を抱えていた。
焼き肉は外でBBQ形式でやることになり、男子は外で火起こしを。
女子は一階にあるキッチンで食材の準備をすることに。
皆でご飯の準備をしていると合宿での楽しかった時間に戻った気分がしていた。
「なァなァ、轟知らねえ?」
「切島君?どうかした?」
「いや、火ィ起こすなら轟だろ!って思ったんだけどさ、姿が見当たンねーんだよ」
「そういえば全然姿を見てない…」
「買い出しん時も忙しいからって断られたしよぉ」
「荷物はそんなに多くなかったと思うけど」
「何でンな事知ってんだ?」
「荷造り、私も一緒にしたから」
「え?雪水が轟の?何で?」
「あっ…いや、えと…」
そうなった経緯をどこから説明すればいいのかわからなくて。
言葉に詰まっていたその時。
「何してんだ?」
「焦凍君!」
「やっと来たか!待ってたぞ!」
「?」
切島君は焦凍君の腕を引っ張ると外へと駆け出して、あっという間に姿を消してしまった。
すぐに私も野菜を切ってと催促の声を掛けられ。
心なしか後ろ髪を引かれる思いを感じながら、女の子達の方へと踵を返した。
程なくして食材を持って外に向かえば、火起こしはほぼ完了していてすぐにBBQが始まる。
焦凍君は緑谷君達と話しているみたいで、私は女の子達と一緒にお肉を焼くことにした。
「そういえば梅雨ちゃんの姿が見当たらないけど…」
「あ、梅雨ちゃんは気分が優れんみたい」
「じゃぁ、部屋にいるのかな?」
「うん。少し休むって言ってたよ」
多少気にはなるものの、目の前で焼きあがっていく食材達をお皿に上げては新たに網の上に乗せ続けた。
「BBQ楽しいけど、外は暑いねー!」
「陽が傾いてきたとは言え、気温は中々下がりませんわね」
「うん…あ、これもう良さそう」
あまり食欲が湧かなくて、ひたすら焼く係に専念していた。
買い出しに出かけた際にはお腹が空いていた筈なのに。
無心で同じ作業を繰り返し続けていたその時。
「紫沫、ちょっとこっち来い」
「え?」
緑谷君達のところにいた筈の焦凍君が後ろに立っていて。
不意打ちに掴まれた腕を引かれるまま、何処かへと歩き出していた。
いきなりの出来事に驚いた顔をした周りにいた女の子達を置き去りにして。
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