第9章 原作編《神野事件》
紫沫SIDE
(口と手を同時にって一体どうやって…?)
少ない知識の中にそんなものはなくて、今していることで精一杯な私はすぐにそれに応える事ができなかった。
だから、きっと、そんな私を見兼ねたんだと思う。
「わりィ…動くぞ」
頭を両手で掴まれて動けなくなったところで、焦凍君自身が動き始めたのだ。
「ッんん…!ンゥ…っ」
いきなりの事に驚いている間もなく、喉奥まで侵入してくるソレにさっきまでとは比べものにならない苦しさに襲われた。
咥えるのに限界だと思っていたところよりも更に深く挿れられて、私の意思とは関係なく口内を掻き乱してくる。
そんな時に頭の上から漏れた声に私は思わず胸をトキめかせてしまった。
「っはぁ…これ、ヤベェ…」
ただ一方的にまるで犯されているかのような状況だけど。
聞こえてきた声が吐息混じりで色気を含んでいたこと。
上手く出来ないと思っていた行為で気持ちよくなってくれてるのかもと。
「んっ…ふ…ンン゛」
喉奥を突くソレの動きはより激しさを増して。
口内に溢れる唾液を飲み込むこともままならず。
まるで下の口みたいにそこから水音が響いている。
相変わらず苦しくて堪らないのに。
強引で無理矢理にも似た状況にゾクゾクとした感覚を覚えている自分がいて。
下腹部が疼いて思考が奪われていく。
「っ…イきそう、だ」
「ンっ…んぅ」
口を塞がれているから言葉を発する事は出来ない。
それでも何か応えたくて、少しだけ。
ほんの少しだけ咥える力を強めた。
「オイッ…やめ…ッ!!」
次の瞬間、口の中で何かが注ぎ込まれている感覚がした。
狭い空間に広がっていく何かは初めて経験するもので。
よくわからない味がして。
どうしたらいいのかわからなくて。
そのまま飲み込んでいた。
「んっ…」
「!?」
直後、頭を抑えていた手に今度はそこから放されと。
口の中が空っぽになった。
「紫沫っ…もしかして、飲んだのか?」
「え?うん?」
「何、してんだっ」
「何って…どうしたらいいかわからなくて…」
何か悪いことをしてしまったのだろうか。
何か間違っていたのだろうか。
何が正解だったのかがわからなくて。
申し訳なさから顔を俯かせていた。
.