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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第2章 中学生編


紫沫SIDE


「…轟君…?」

人影に声をかけるとゆっくり顔が上がって、私の名前を呼ぶ。

「…雪水?」
「やっぱりそうだ。…あれ?轟君泣いてるの?」

思った通りその人影は彼で、嬉しさがこみ上げる。
けれど、彼はまるで泣いているみたいな表情をしていて、心配になりしゃがみこんでそっと手を伸ばした。

「どうしたの?どこか痛いの?」

別に意識したわけじゃなかったけど、自然と出て来た言葉は幼い彼にかけた言葉と同じものだった。

「……紫沫…」

目の前の彼は昔のように下の名前で私のことを呼んだ。
あの頃は紫沫ちゃんだったけど。

「痛いの痛いのとんでけ、なんてね」

子供騙しな言葉だけど、少しでも彼の表情が晴れてくれればと願いそう言いながら、"治癒"を発動させる。
きっと、今の彼にはこの"個性"が必要だと思ったから。

「綺麗だ…」

暫く"個性"を使っていると、そう言った彼の表情が先程より穏やかなものになっているのを確認して、"個性"を止めて手を離した。
そのまま彼の隣に座り、静かに口を開く。

「ねぇ、昔の私は轟君のこと、焦凍君って呼んでたよね」
「…思い出したのか?」
「うん。思い出したよ、全部」
「そうか」
「あのね、私、焦凍君の"個性"好きだよ」
「俺も、紫沫の"個性"好きだ」

やっと思い出せた記憶を共有したくて、昔をなぞらえて口にした言葉だった。
あの時は単純に嬉しかったけど、今改めて言われるとなんだか告白されてるみたいに感じて少し恥ずかしくなってしまった。

「怪我してるわけじゃねぇのに、"個性"使わせちまって悪かったな」
「っ私が勝手にやったことだからきにしないで!」
「…なんか顔赤くねぇか?大丈夫か?」
「だ、大丈夫!大丈夫だから、あまり見ないで…」

まだ少し薄暗かったしバレないと思っていたら、あっさり見抜かれてしまい慌てて顔を俯かせた。

「…フッ、可愛い」
「へ?…え?!いや、ちょっ、え!?」

もう色々と限界だった。
今隣にいるのは本当にあの轟君なんだろうか?
私の知る限りそんな事を口にするタイプではなかった筈で、その前の言葉とも掛け合せると。
余計に心拍数の上がる思いがした。



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