第8章 原作編《林間合宿》
轟SIDE
八百万に話を持ちかけた翌日ーー…紫沫と爆豪が攫われてから2日目になる。
無事だったクラス全員で緑谷の元へと訪れていた。
「あー緑谷!!目ぇ覚めてんじゃん」
「え?」
「テレビ見たか?学校いまマスコミやべーぞ」
「春の時の比じゃねー」
「メロンあるぞ。皆で買ったんだ!」
真っ先に病室へと入っていった上鳴の言葉に緑谷が目覚めた事を知ると、それに続けてクラスの面々が口を開く。
「迷惑かけたな、緑谷…」
「ううん…僕の方こそ…A組皆で来てくれたの?」
「いや…耳郎くん葉隠くんは敵のガスによって未だ意識が戻っていない。そして八百万くんも頭をひどくやられここに入院している。昨日丁度意識が戻ったそうだ。だから来ているのはその3人を除いた…」
「…15人だよ」
「紫沫と爆豪がいねえからな」
「ちょっ轟…」
「…」
「オールマイトがさ…言ってたんだ。手の届かない場所には救けに行けない…って。だから手の届く範囲は必ず救け出すんだ…僕は…手の届く場所にいた。必ず救けなきゃいけなかった…!僕の"個性"は…その為の"個性"…なんだ。相澤先生の言った通りになった…体…動かなかった…」
「じゃあ今度は救けよう」
「へ!?」
「実は俺と…轟さ、昨日も来ててよォ…そこでオールマイトと警察が八百万と話してるとこ遭遇したんだ」
その時の会話の事を切島が話し終えると、直ぐに飯田の抗議の声が上がった。
「…つまりその受信デバイスを…八百万くんに創ってもらう…と?オールマイトの仰る通りだ。プロに任せるべき案件だ!生徒の出ていい舞台ではないんだ、馬鹿者!!」
「んなもんわかってるよ!!でもさァ!何っも出来なかったんだ!!ダチが狙われてるって聞いてさァ!!なんっも出来なかった!!しなかった!!雪水なんてすぐ近くにいたのに気付かねえで攫われちまったんだ!!ここで動けなきゃ俺ァヒーローでも男でもなくなっちまうんだよ」
「切島落ち着けよ。こだわりはいいけどよ、今回は…」
「飯田ちゃんが正しいわ」
「飯田が、皆が正しいよ。でも!!なァ、緑谷!!まだ手は届くんだよ!」
その言葉は目の前で大事な者を攫われた当事者にとってはこれ以上にない殺し文句だった。
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