第8章 原作編《林間合宿》
轟SIDE
敵に襲われたことで林間合宿は終わり、無事だった生徒達はそれぞれ家へと帰されることとなった。
煮え切らない想いを抱いたまま家で過ごす事など出来るわけもなく、翌日は被害に遭った生徒が入院している合宿所近くの病院へと足を運んだ。
「あー!?轟なんでいんの!?」
声のした方へと振り向けばそこには切島の姿があった。
「おまえこそ」
「俺ァ…その…なんつーか…家でジっとしてらんねー——…つうか…」
「…そっか。俺もだ」
切島と共に緑谷の病室へと向かう途中、八百万の病室の前を通った際に中から話し声が聞こえてきたことでその場に歩みを止める。
「B組の泡瀬さんにご協力頂き敵の一人に発信機を取りつけました。これがその信号受信するデバイスです。捜査にお使い下さい」
八百万の言葉に俺はある一つの可能性を見出していた。
それは切島も同じようで聞き耳をたてて様子を伺っている。
「級友の危機に…こんな形でしか協力できず…悔しいです」
「その気持ちこそ君がヒーローたりうる証だよ。後は私たちに任せなさい!」
中にいたオールマイトと警察が帰ったのを見計らって八百万の病室へと足を踏み入れた。
「八百万、さっきの話だが…」
「轟さんに切島さん…さっきとは発信機のこと、ですか?」
「その受信機を俺らにも創ってくれねえか?」
「受信機を創ってほしい!?」
「あア、頼む」
「理由は言わなくてもわかるだろ」
「…少し考えさせて下さい」
「わかった。だが、あまり待ってられねぇ。2人を…紫沫を一刻も早く救けてぇんだ」
どうしようもないとわかっていながら、その事を考えずにはいられなかった。
勿論爆豪の安否も気になるが、それ以上に紫沫の事が気になって、時間が経つ程にその気持ちは増す一方だ。
「私も心配です…事前情報で爆豪さんが狙われてることは知っていましたがまさか雪水さんまで攫われるなんて…」
「すまねぇ…同じ場所にいながら、俺ァ…何も…っ」
気にするなとは言えなかった。
しかし救け出せる最後の機会で手を伸ばせず、目の前で攫われるのをただ見ていた自身のことが何よりも許せない。
「明日の夜、病院の前で待つ。そこで答えを聞かせてくれ」
翌日までと期限を決め、その日は病院を後にした。
.