第8章 原作編《林間合宿》
轟SIDE
見たことのない女がいたがすぐに姿を消した為深追いすることなく、爆豪を護衛しつつ共に施設に向かおうと話を持ちかけた時だった。
「……ん?」
「爆豪ちゃんを護衛?その爆豪ちゃんはどこにいるの?」
「え?何言ってるんだ。かっちゃんなら後ろに…」
この非常時に誰も油断する人間なんているハズなかった。
なのに後ろを歩いていた爆豪の姿が見当たらず、見覚えのない奴の声が木の上から降ってきた。
「俺のマジックで貰っちゃったよ」
「!!」
「こいつぁ、ヒーロー側(そちら)にいるべき人材じゃあねえ。もっと輝ける舞台へ俺たちが連れてくよ」
「——!?っ返せ!!」
「返せ?妙な話だぜ。爆豪くんは誰のモノでもねえ。彼は彼自身のモノだぞ!!エゴイストめ!!」
「返せよ!!」
「どけ!」
声の主が敵であることは明白で、すぐ様氷結で捉えようとするもかわされてしまう。
「我々はただ、凝り固まってしまった価値観に対し「それだけじゃないよ」と道を示したいだけだ。今の子らは価値観に道を選ばされている」
「…!爆豪だけじゃない…常闇もいないぞ!」
後ろ二人を音も無くさらったというのか。
どういう"個性"なのかわからないが…
「わざわざ話しかけてくるたァ…舐めてんな」
「元々エンターテイナーでね。悪い癖さ。常闇くんはアドリブで貰っちゃったよ。ムーンフィッシュ…「歯刃」の男なアレでも死刑判決控訴棄却されるような生粋の殺人鬼だ。それをああも一方的に蹂躙する暴力性。彼も良いと判断した!」
「この野郎!!貰うなよ!」
「緑谷落ち着け」
「麗日、こいつ頼む!」
「え、あ、うん!」
B組の奴を麗日に託し今度は最大威力の氷結を放った。
しかしそれすらもかわされてしまう。
「悪いね、俺ァ逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ!ヒーロー候補生なんかと戦ってたまるか。開闢行動隊!目標回収達成だ!短い間だったがこれにて幕引き!予定通りこの通信後5分以内に"回収地点"へ向かえ!」
「幕引き…だと」
「ダメだ…!!」
「させねえ!!絶対逃がすな!!」
その時、森の中を何かが通ったような気がしたが、目の前の状況を優先して気のせいで済ませてしまった。
この後俺は、それを酷く後悔することになるとは知りもせずに。
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