第8章 原作編《林間合宿》
紫沫SIDE
「轟ーこっちも火ィちょーだい」
「爆豪、爆発で火ィつけれね?」
「つけれるわクソが!」
「ええ…!?」
爆豪君の爆破でかまどが一つダメになっていた。
「皆さん!人の手を煩わせてばかりでは火の起こし方も学べませんよ」
「…」
「いや、いいよ」
「わー!ありがとー!!」
そう言って火を起こす焦凍君の横顔がとても穏やかに見えて、私は無意識の内に笑みを浮かべる。
「おい雪女!そんなちんたら切ってたら終わんねえだろうが!」
さっきまでかまどにいた筈の爆豪君が隣に来ていて、そう吐き捨てると高速で残りの野菜を切り始めた。
もしかして手伝いに来てくれたのだろうか。
体育祭の一件以来あまり関わる事はなかったけれど、たまにこうやって優しいところを見るともっとお喋りしてみたいなとも思う。
「爆豪君て家で手伝いとかしてるの?」
「んな訳あるか!」
「包丁使うの上手いね?」
「こんなん誰でもできるわ。つか、お前も手止めてねえでさっさとやれ!」
「あ、ごめん。爆豪君、ありがとね」
「うっせーわ」
相変わらずキツイ口調だけど爆豪君のお陰であんなに大量にあった野菜はあっという間に切り終わり、カレーも程なくして出来上がった。
「「「いただきまーす!」」」
「店とかで出たら微妙かもしれねーけど、この状況も相まってうめー!!」
「言うな言うな、ヤボだな!」
皆食欲は健在のようで瞬く間にカレーが胃袋の中へと消えていく。
「紫沫、さっき爆豪と何話してたんだ?」
「他愛ない話だよ?野菜切るのすごく早かったから家でもやってるのかとか」
「そうか」
「なんで?」
「いや、なんでもねぇ」
何となく何でもない感じじゃないと思った。
でもそれが何なのかはわからなくて、今の私が思い付いたのは一つしかなかった。
「明日の夜ご飯作る時は同じ作業する?」
「…ああ」
私の自惚れかもしれないけど、焦凍君も作業しながらお喋りしたかったのかもしれない。
だから少しでもそうなれるように、誘ってみた。
「明日の夜は肉じゃがだっけ?楽しみだね!」
「そうだな」
一緒にいれることを私が嬉しく思ってしまったけど、焦凍君も嫌そうではないからこれで良かったってことにする。
そして今日のカレーは余す事なく食べ尽くされ、大盛況のうちに終わったのだった。
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