第8章 原作編《林間合宿》
轟SIDE
風呂を済ませ、大部屋で就寝準備を終えた頃に女子がやってきた。
何でも遊びに来たらしい。
その中には勿論紫沫の姿もあって、何故か髪を結い上げていた。
「オイオイ、雪水の頸ヤベェな」
同じくその姿を見つけたらしい峰田がそんな言葉を漏らしていた。
花火大会の日にも思ったことだが、その意見には賛同するも俺以外の奴に晒して邪な目で見られているのは正直良い気分ではない。
そこから遠ざける為にもクラスの奴らから少し離れた場所にいた俺の元へ紫沫を呼び寄せる。
「何で髪上げたんだ?」
「ちょっと暑かったから」
「そうか」
理由はわかったが、どうやって髪を下ろさせるか考えた時にあることが思い浮かんだ。
見られたくないものがあれば自ずと隠すだろうと。
「少し後ろ向いてくれねぇか?」
「ん?いいけど、何で?」
俺の言葉に多少疑問は抱くも素直に背中をこちらへと向ける。
逃げられるかもしれないことを考慮して腹部へと腕を回し、素早く露わになっている頸へと吸い付いた。
クラスの奴から俺の姿は紫沫に隠れて見えないから何をしているかはわからないだろう。
「っ!?」
目的を果たすと、吸い付いたところを指で示しながら周りに聞こえないよう背後から耳元で呟く。
「ここのキスマーク、見られたくなかったら髪下ろした方がいいぞ」
それだけ言ってすぐに腕を放し離れた。
頸に手をあてこちらに振り向いた紫沫は驚きと羞恥心の混ざった顔をしている。
「な、な…!?」
何か言いたかったようだが言葉になっていない。
「あっちでトランプ始めるみてぇだ。行かなくていいのか?」
目的を果たしたことで満足し、皆が集まっているところへと促す。
上手く言葉が見つからなかったからなのか何も言わずに髪を下ろしていた。
少し睨まれた気もしたが無防備に頸を晒していた紫沫のせいなのだから、こちらに非はない筈だ。
暫くして観念したのか少し不服そうな顔をしながらも皆の元へと向かい始める。
少しして緑谷に呼ばれたので俺もそちらへと向かった。
七並べというのをするらしい。
こういう遊びの経験が無いというと、周りが心底驚いたような顔をしてこちらを見ている。
取り敢えず簡単なルール説明をしてもらい人生初のトランプゲームが始まった。
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