第8章 原作編《林間合宿》
紫沫SIDE
バスが走り続けること一時間。
たまたま目覚めたタイミングでとある場所で止まったので、休憩だと思いバスを降りた。
「休憩だー…」
「おしっこおしっこ…」
「つか何ここ。パーキングじゃなくね?」
「ねえアレ?B組は?」
「お…おしっこ…」
そこは何もない高台で、あるのは崖の下に広がる森と山。
休憩所にしては何もなさすぎる場所だと思った。
「こんなところで休憩?」
「さァ、どうだろうな」
焦凍君も違和感を感じているみたいだ。
「何の目的もなくては意味が薄いからな」
「トトトトイレは…」
「よーう、イレイザー!!」
「ご無沙汰してます」
女の人の声が聞こえてきてそちらに視線を向けると。
「煌めく眼でロックオン!」
「キュートにキャットにスティンガー!!」
「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」
コスチュームを身に纏った2人の女性がいきなり現れたのだ。
「今回お世話になるプロヒーロー「プッシーキャッツ」の皆さんだ」
「連盟事務所を構える4名一チームのヒーロー集団!山岳救助隊等を得意とするベテランチームだよ!キャリアは今年で12年にもなる…」
「心は18!!」
「へぶ」
「心は?」
「じゅ18!!」
緑谷君が2人の内金髪のプロヒーローに顔面を鷲掴みにされて大丈夫かと思っていると、黒髪のプロヒーローが崖の方を指差して話を続けた。
「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね。あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」
「「「遠っ!!」」」
「じゃあ何でこんな半端なとこに…」
「いやいや…」
「バス…戻ろうか…な?早く…」
クラスの皆も違和感に気付き始めていた。
「今はAM9:30。早ければぁ…12時前後かしらん」
「ダメだ…おい…」
「戻ろう!」
「バスに戻れ!!早く!!」
雄英がどういう学校なのかを今更思い出しても時既に遅し。
「12時までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね」
今日来たのは楽しい林間合宿なんかじゃなくて、険しい強化合宿なのだということに改めて気付いた。
「わるいね諸君」
緑谷君の顔を鷲掴みにしていたプロヒーローが地面に手を当てたのと同時に足元が盛り上がった。
「合宿はもう、始まってる」
土砂の波に巻き込まれて強制的に私達は崖の下へと振り下ろされたのだった。
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