第7章 原作編《夏休み》
轟SIDE
花火大会というものにあまり縁がなかった。
幼い頃は興味を持っていたかもしれないが、もう覚えていない。
たまたまポスターを見つけて紫沫が興味を持ったから来てみたが…
それよりも浴衣姿で現れたことに俺は惹かれてしまう。
いつもは降ろしている髪が結い上げられていて、普段見ることのない頸が露わになっている様は目に毒とすら感じていた。
そんな中花火を見る為に訪れたのは穴場スポットと言われている場所らしく、俺たち以外に人の姿はないようだ。
そしてついに始まった花火が不意に止んだことで訪れた静寂に何を思ったのか。
紫沫が俺の服を引っ張る感覚がした。
「紫沫?…どうした?」
「傍にいるのを確かめたくて…」
「大丈夫だ。俺はここにいる」
見上げてくる顔をはっきりと視認することはできない。
どこか不安そうな気配に安心させるつもりで唇を重ねる。
それは触れるだけのものだった筈が。
首に回ってきた腕と寄せられた身体。
更に口元が薄く開かれ。
迷いなく俺は、その中へと舌を這わせた。
元より紫沫の姿にアテられていたのに…
こんな風にされては理性を保っていられない。
程なくして再開した花火のことなど気にすることなく。
逃げられないよう、後頭部と腰に腕を回し捕えて。
貪るように紫沫の口内を堪能した。
事の後、目に映った表情に忠告のつもりで問い掛けた。
「今自分がどんな顔してるかわかってるか?」
その問いに応えが返ってきそうになく、続けて言葉を放つ。
「そんな無防備な顔されたら止まらなくなっちまうぞ」
それは最後の警告。
もしこれにも応えないなら…
「焦凍君…」
俺の名を呼ぶその声音は抑えようとしていた欲望を掻き立てるには充分だった。
今度は触れるだけなんてまどろっこしいことはしない。
再び奪った口付けは先程よりも更に深く。
舌を絡ませ翻弄する。
腰に回していた腕を浴衣の襟元へと忍ばせながら。
ちゃんと着付けていれば簡単に崩れることはないが、外から少し手を加えてやれば呆気なく肌は露わになる。
浴衣なんてたった一枚の布に他ならない。
こうなったのも全ては紫沫が煽るからだと心の中で呟きながら。
口付けから流れのままに。
先程まで隠されていた雪肌に吸い込まれるようにして、
唇を這わせた。
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