第6章 原作編《期末試験》
紫沫SIDE
「えっと…もしかして、このまま皆の所に戻る?」
「そうだが、どうかしたか?」
「いや、何でもアリマセン…」
所謂お姫様抱っこをされて皆の前に行くのだと思うと恥ずしくてたまらないけど、自分では歩けないのでそれ以上何も言えない。
試験会場の外に出たところで、クラスの皆が出迎えてくれていた。
「雪水さん!大丈夫ですの!?」
「紫沫ちゃん!心配で来ちゃったわ」
「何かよくわかんねえけど、凄かった!」
「初めて"個性"を見たがとても驚かされたぞ、雪水くん!」
「雪水さん、条件達成おめでとう!」
「ほんま、クリアおめでとーう!」
「…有終完美」
「あの、えっと…」
皆から心配だったり"個性"の事だったりを一斉に言われて、何から返せばいいのかわからず、うまく言葉が出てこない。
そんな私の様子に気付いたのか轟君が助け舟を出してくれた。
「お前ら一斉に喋り過ぎだ。紫沫が困ってるぞ」
その一言で場が収まったのを見計らって、改めて口を開いた。
きっと、除籍処分の事や制御の効かない"個性"を見て色々気に掛けてくれてたんだと思うから。
それに、条件達成出来たのは皆のお陰でもあるから。
ちゃんとお礼を言いたかった。
「心配かけちゃってごめん。それから、皆の頑張ってる姿を見てたから、私も絶対条件達成しなくちゃって勇気をもらった。本当にありがとう!!」
抱き抱えられた状態じゃあまり格好は付かないけど、皆の顔を見れば気持ちはちゃんと伝わってると思えた。
その姿にまた心の中が温まる感じがして、これからも皆と一緒に過ごせるのだと実感して、自然と笑みが溢れる。
「紫沫。遅くなっちまったが、条件達成出来て良かったな」
「ぁ…ありがとう」
頭上から聞こえた労いの言葉に顔を見上げると、微かに微笑む轟君と目が合って、少しだけ見惚れてしまいそうになった。
「わぁ!轟もそんな顔するんだね!?」
「フフ…その顔、僕にはわかるよ。つまり、LOVEだね☆」
芦田さんと青山君の言葉にクラスの視線が轟君に集まる。
そして、青山君の爆弾発言によってその場の話題は一気に方向転換をしてしまったのだった。
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