第6章 原作編《期末試験》
轟SIDE
紫沫が試験会場に入って行くのを見送ってからモニタールームに向かうと、既に1-A全員が画面に視線を向けている。
そんな中、俺の存在に気付いた緑谷が声をかけてきた。
「僕、雪水さんの"個性"初めて見るよ。轟君は知ってるんだよね?」
「ああ。だが、今の状態の"個性"は見たことねぇ」
「今の状態?そう言えばこの歳で制御が効かないって、まさか…」
「中学の頃は普通に使ってたぞ」
「あ、そうなんだ!なら、何で…」
《それでは最終試験を行うーー…START!》
試験開始の合図が聞こえ、画面に映し出されたのは荒狂う雪が舞う俺の知らない紫沫の"個性"。
「うわ!何だコレェエエ!?」
「雪水さんの"個性"がこれ程のものとは思いませんでしたわ…」
「見てるだけで凍えちまいそうだぜ…」
「クソ治癒女が…こんなもん隠し持ってやがったとは…!」
クラスの皆が口々に驚きの声を上げている中、俺はひたすらに画面の中にいる紫沫を見つめていた。
確かに以前の物とは比べ物にならない程の威力ではあるが、"雪"である事に変わりはなく、間違いなくこれは紫沫の"個性"だという確信があった。
「雪水さん、これを制御出来ないって…本人にも影響出ちゃうんじゃ…」
「…ああ」
そこから既に10分以上が経過しようとしていたが、以前として威力が収まる気配はなく、とっくにキャパオーバーしていてもおかしくないのにと少しずつ不安が押し寄せていた時だった。
見るからに勢いが弱まっていくのがわかり、数十秒と経たず、辺りには俺のよく知るあの光景が広がっていた。
《雪水紫沫、条件達成!》
相澤先生の条件達成の報せが聞こえ、その直後紫沫がその場にへたり込む姿が見えた。
何かを言っている様だがこちらには聞こえない為わからない。
相澤先生はあちらの声が聞こえているらしく、マイクに向かって言葉を放つ。
《何やってんだ。ったく、迎えをよこすからそこで待て》
そして、何故かこちらを向いてこう続けた。
「轟、雪水が腰を抜かして動けないらしい。迎えに行ってやれ。必要があれば"個性"を使っていい」
「わかりました」
要するに体温低下の可能性があるから俺に行けと言う事かと理解し、誰よりも早く会いに行ける事に少なからず優越感を覚え、俺は試験会場へと急いだ。
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