第6章 原作編《期末試験》
紫沫SIDE
一斉スタート直後、私は轟君と八百万さんチームの映像を見ていた。
音声はあまり聞こえないから何を話しているかはわからないけど、八百万さんはなんだか浮かない顔をしている。
「期末前も確かあんな顔してたな…」
「あの二人は推薦入学者だね。気になるのかい?」
「はい。一番仲のいい二人なんです」
八百万さんとは席が近い事もあって、入学時から声を掛けてくれたりしたから話す機会も多くて、自然と仲良くなっていった。
それなのにチーム発表の時に心が騒ついた事は少し後ろめたい気持ちもあったけど、今はもうそうではなくなっている。
試験が始まってしまえば、思うのは合格してほしいって事だけ。
だからこそ、序盤の八百万さんの事がとても気になっていた。
「きっと、この二人なら合格しますよね」
「しっかり見届けてやりな」
相澤先生に先手を打たれて、轟君が捕まり八百万さん一人で脱出ゲートに向かっていたけど、最終的にカフスを掛けるという選択をしたらしく、大氷壁で視界を遮ってから創造で捕縛布の様なものを作り、それが熱に反応して瞬時に元の形状に復元する仕組みになっていて、見事相澤先生を捕まえるのに成功した。
"個性"を消されながらも、お互いの力を上手く使った作戦だった。
私はやっぱり轟君の"個性"に見惚れてしまったりもしたけど。
《報告だよ。条件達成最初のチームは、轟・八百万チーム!》
リカバリーガールが全ステージに聞こえる様にマイクに向かってそう告げた。
一番最初の達成チームという事に、流石だなと思った。
程なくして二人がここにやってくる。
「二人共お疲れ様!条件達成本当におめでとう!!」
「おお」
「雪水さん、ありがとうございます…!」
なんだか少し八百万さんが涙ぐんでる様に見えたけど、そこは見ないフリをした。
きっと、今回のテストで何か想う事があったんだろう。
「二人とも、大した怪我は無さそうだね」
「轟君、頭ぶつけてたよね?もし良いなら、私が"治癒"してもいいですか?」
「私は別に構わないよ」
「ああ、頼む」
「はい!」
少し打った位の怪我ならそんな負担にもならない。
何より轟君の治癒を自分がしたかったのだ。
すぐに"治癒"を発動させると、轟君は少し表情を和ませその光景を見つめていた。
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