第5章 原作編《ヒーロー情報学〜ヒーロー基礎学》
紫沫SIDE
ヒーロー基礎学が終わり、女子更衣室で着替えていると、なんだか隣が騒がしいのに気が付いた耳郎さんが"個性"で隣の様子を伺っていた。
「耳郎さん、隣どうかした?」
「ちょっとね、嫌な予感がするんだよ。それに、ここ。穴空いてる」
私達には何と言っているのかは聞こえないけど、確かに壁には穴があった。
一体嫌な予感と言うのは何だろうと私も聞き耳を立てていると、その穴から微かに声が聞こえてきた。
「オイラのリトルミネタはもう立派なバンザイ行為なんだよォォ!!八百万のヤオロヨッパイ!!芦戸の腰つき!!葉隠の浮かぶ下着!!麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱい!!そして、雪水の生足ィイイイ」
と、そこまで聞こえた所で、耳郎さんのイヤホンジャックがすかさず穴の中を通って向こう側へと消えていった。
そして、聞こえてきたのは誰かの絶叫。
「あああ!!!目から爆音がああああ」
これは多分さっきの声からして峰田君だ。
「ありがと、響香ちゃん」
「何て卑劣…!!すぐにふさいでしまいましょう!!」
「生足って、制服の時は生足だよね?」
「そう言う問題じゃないんよ、紫沫ちゃん」
「…ギィヤァアアア」
一度収まったと思っていた絶叫が再び木霊した。
「ねぇ、何故か轟が"個性"使ってるみたいなんだけど」
「え?轟君が??」
「うん。緑谷が止めようとしてる声が聞こえる」
「轟さんが不用意に"個性"を使うなんて、珍しいですわね?」
女子更衣室にいる全員が疑問符を浮かべている。漏れなく私も浮かべていた。
八百万さんの言う通り轟君がこんな所で"個性"を使うなんてそれこそ一体何があったと言うのだろうか?
取り敢えず着替えて教室に戻ると、ガクガクブルブルと震えている峰田君の姿があった。
そして、本日の授業も全て終わり帰り支度をしている時、
「紫沫、帰るぞ」
「え?」
まさかの轟君から声をかけられ驚いて反応が遅れた隙に、手を引かれてそのまま教室の外へと連れていかれてしまう。
雄英に来てからは女の子達と帰るのが当たり前になっていた為、轟君と帰った事は一度もなかったというのに、いきなりの事に私は引っ張られるままついて行くことしか出来なかった。
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