第5章 原作編《ヒーロー情報学〜ヒーロー基礎学》
紫沫SIDE
「ム、また威力が増したな。なかなかやるではないか」
その一言がとても嬉しくて、私は思わず笑みを浮かべる。
しかし、その分だけ身体への負担が増してとうとう私は意識を手放してしまった。
そして次に目覚めた時、目の前に飛び込んできたのは誰かの腕。
(デジャヴ…)
二度目となると耐性が付いたのか以前程驚きはしなかったけど、それでもこの状況を理解する事は出来なくて、少し悩んだ末に今度は寝返りを打つ事にした。
そして目に飛び込んできたのはやっぱり轟君で、寝ているのか目をつぶっている。
(綺麗な寝顔…男の人なのに、狡い)
こんな至近距離なのに、相手が寝ているからなのか少しだけ積極的になっている自分がいて、何気なく左側の火傷痕に手を伸ばした。
そこは前と変わらず少しザラっとした感触がしたけど、もうあの時の様な感覚にはならない。
寧ろこうして触れられる事が嬉しくて夢中になっていると、ゆっくりと目の前の瞳が開かれていく。
「…そんなに気になるか?」
「わっ!?」
あれだけ無遠慮に触れていたのだから起きて当然なのに、その事がすっかり頭が抜けていた私は驚きで咄嗟に手を引こうとしたら、その手はあっさりと掴まれてしまった。
「触ってきてのはそっちだろ?何驚いてんだ」
「いや、これは、その…起きると思ってなくて…」
「言っとくが、ずっと起きてたぞ」
「え?」
最初から起きていたならもっと早く教えてくれていれば良いものを、何故私が夢中になるまで黙っていたのかと何とも身勝手な事を考えていると、
「こっち向く気配がしたからな。少し様子伺うつもりで寝たふりしてたんだが、まさかここに触れてくるとは思わなかった」
そう言って、掴んだ私の手を再び火傷痕へと誘う。
「別に紫沫に触られるのは嫌じゃねぇ」
「…私も気になったと言うか、勝手に手が伸びてしまったと言うか。何でかな。こうして轟君に触れられるのが嬉しい」
「なら、俺も紫沫に触れていいか?」
私の手を掴んでいた轟君の手が放れて、そのまま唇を親指で撫でられた。
それに私は火傷痕から手を放し、瞳を閉じる事で了承の意を伝える。
口元にあった手が頬へと滑り少しだけ引き寄せられ、もう何度目になるかわからない触れるだけの口付けを交わした。
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