第2章 中学生編
轟SIDE
雪水の髪に触れたあの日からよくわからない感情が俺の中に存在していることが気になっていた。
しばらくの間あの感触が忘れられなくて、ふとした時にまた触ってみたいとさえ思ってしまっている。
(なんだ、これ…)
今まで他人に触れるなんてことをしたいと思ったことはない。
いくら考えても初めて抱く気持ちに答えは一向に出る気配はなかった。
そのせいなのか、雪水のことを視界に入れることが増えていた。
(…今度確かめてみるか)
答えの出ないままいることにそろそろ痺れを切らし始めていたそんな時だった。
隣に視線を向けると、雪水は問題集らしきものに向かって首を傾げている。
何をしているのだろうと視線をそちらに向ければ、見えたのは英語の問題集。
「わかんねぇとこでもあんのか?」
俺としてはごく自然な流れで聞いただけなのだが、何故か凄く驚かれてしまい一瞬雪水の動きが止まっていたように見えた。
「…あっ…うん。英語の文法問題で、わからないとこがあって…」
「あぁ、それは、過去進行形だ。ちょっと前に授業でしてたぞ」
「そうなんだけど…英語苦手で…」
「普通に授業聞いてりゃわかるけどな」
「流石轟君…」
「そうか…?」
勉強に関して今までそんな難しいと思ったことはない。
特別な事をしなくても点は取れていた。
「………あの、もし、迷惑じゃなかったら…英語…教えてもらうことって、できるかな?」
暫く何かを考えている素振りをした後に、遠慮がちに言ってきて。
その言葉を聞いた時、さっき考えていたことが脳裏をよぎった。
(確かめてぇことがあったな)
ずっと答えの出ない違和感を拭い去る為にも、いい機会だと思った。
丁度明日は休みで、クソ親父も姉さんも仕事でいない。
夏兄はどうかわからないが、特に気にすることでもないか。
「なら、明日俺ん家来るか?」
「え?…轟君のお家…?」
「英語、教えてもらいてぇんだろ?」
「あっ、うん、そうだけど…いいの…?」
「別に、構わねぇ」
「…なら、お願いします」
「ああ。詳細は後で連絡する」
連絡先を交換したところで予鈴が鳴り、そこで会話は終了した。
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