第5章 原作編《ヒーロー情報学〜ヒーロー基礎学》
紫沫SIDE
「ただいま戻ったぞ。診察結果なんだが…おや?雪水くんは寝ているのか?」
「…ああ…寝不足だったみてェで仮眠させたところだ」
そう言って轟君は一度視線をこちらに向けると、私に布団を被せてからベッドの端に腰掛けた様だった。
突然開いた扉に心臓がばくばくと音を立てているのを必死に抑えようとするも、さっきの出来事を思い出してしまい、一向に収まる気配がなくて、轟君に言われた通り寝たふりをする事にして、目を閉じる。
「で、診察結果どうだったんだ?」
「ああ、それなんだが…」
「あ、飯田くん。いま、麗日さんがね…」
電話から戻ってきたらしい緑谷君の声が聞こえてきて、飯田君の診察結果が気になった事もあり、寝たふりをしつつ聞き耳を立てていた。
「緑谷。飯田、今、診察終わったとこなんだが」
「…?」
「左手、後遺症が残るそうだ。両腕ボロボロにされたが…特に左手のダメージが大きかったらしくてな。腕神経叢という箇所をやられたようだ。とは言っても、手指の動かし辛さと多少のしびれくらいなものらしく、手術で神経移植すれば直る可能性もあるらしい。ヒーロー殺しを見つけた時に何も考えられなくなった。マニュアルさんにまず伝えるべきだった。奴は憎いが…奴の言葉は事実だった。だから、俺が本当のヒーローになれるまで、この左手は遺そうと思う」
その言葉にヒーロー殺しとの戦闘がどれ程の物だったのかを想像して、少し寒気がした。
轟君は軽傷だと言っていたけれど、決して楽な戦いではなかったのだ。
「…あ…飯田くん。僕も…同じだ。一緒に強く…なろうね」
「なんか…わりィ…」
「何が…」
「俺が関わると…手がダメになるみてぇな…感じに…なってる…」
「あっはははは。何を言っているんだ!」
「轟くんも冗談言ったりするんだね」
「いや、冗談じゃねぇ。ハンドクラッシャー的存在に…」
「ハンドクラッシャー!!」
「ぶはっ」
久々に聞いた天然発言に、さっきまでの轟君とのギャップも相まって、堪えきれず吹き出してしまった。
「え?今の声って…」
これはもう寝たふりを続行するのは無理だと諦め、解かれたネクタイを締め直してから、私は布団から顔を出し、
「寝ようと思ったんだけど…ハンドクラッシャーって…あはは」
大いに笑った。
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