第5章 原作編《ヒーロー情報学〜ヒーロー基礎学》
紫沫SIDE
「悪ィ。ボーッとしてたから眠いんじゃねぇのかと思ったんだが…そうか…眠くねえなら…」
見当違いな事を言っている轟君に、さっきの行為はもう終わったのだと油断していた。
「もっと紫沫に触れてぇ」
続く言葉を耳元で囁かれた。そのまま首元へと顔を埋められ、そこに口付けされたかと思うと、鈍い痛みが走る。
「ひぁっ…」
「そんな声、初めて聞いた。すげぇ可愛いな」
顔を上げた轟君の色違いの瞳には以前見た熱が灯っていた。
その瞳に見つめられた私は、またしても囚われてしまう。
身体の自由を奪われただ見つめ返す事しか出来ずにいると、顔が近付いて来て唇を奪われた。
いつもよりも少し荒っぽいそれに翻弄され目を閉じると、すぐに口内への侵入を許してしまい、身体の力も思考も全てを轟君に持っていかれてしまう。
息がそろそろ限界という所でやっと放れた唇は銀糸を引いていて、それを舐め取る仕草に男の人に対して初めて妖艶だと思った。
そんな姿に見惚れていると、また首元に顔を埋められた。
触れるだけの口付けを何回も何箇所にもされて、私がどう反応するかを一つ一つ確認されてるみたいで、恥ずかしいのに、勝手に身体が反応して声が漏れてしまう。
触れた箇所から伝わって、一度落ち着いた身体の熱がさっきよりも更に上がっていくのを感じた。
触れていない処がないのではと思う位に首元から鎖骨にかけて何度も口付けを落とされ、漸く放れたと感じたら、またあの瞳が私の目を捕らえる。
「首弱ェのか?俺が触れたとこ全部反応してたぞ」
「っそんなの、知らない」
「そうか。なら、他のとこも確かめてみねぇとな」
そう囁く声は普段とは違う低音で、とても耳に響いてそれすらも身体が反応しそうになってしまった。
轟君は、先程の行為で少し緩んでいる私の制服のネクタイに手をかけていて、毎日使う物だからなのか慣れた手つきであっという間に取り払われてしまう。
そしてそのままシャツのボタンへと手が伸びる。
「あ…」
自分でも何を言いたくて声を出したのかわからないけど、咄嗟に出てしまった。
けれど、轟君は特に気にした様子はなく、一つ目のボタンを外そうとしたその時。
病室の扉が開く音がして、私は咄嗟に轟君の事を突き飛ばしていた。
.