第5章 原作編《ヒーロー情報学〜ヒーロー基礎学》
紫沫SIDE
教えてもらった場所はすぐに分かって、そこに数人の人影が見えた。
その中に、紅白色をした頭を見つけ、私は走っている勢いのままその人へと抱き着いた。
「轟君っっ!」
「ぅおっ…紫沫?」
「え?雪水さん!?」
「おや、何故雪水くんがここに?」
「きゅ、救急車で、運ばれたって、聞いてっ、また、いなくなったらって…っ」
姿を見て、温もりを感じて、安心したからなのか、緊張が解けたからなのか、涙が溢れてしまう。
「俺は軽傷だ。だから、いなくなったりしねえ」
「っよかった…よかった…」
抱き締め返してくれて、優しく頭を撫でられる。
それでもすぐに涙は止まってくれなくて、私が落ち着くまでずっとそうしてくれていた。
周りに誰かいた気がしたけれど、誰なのかを確認する余裕はなくて、轟君はちゃんとここにいるんだと存在を確かめる事で頭がいっぱいだった。
辺りに誰もいなくなった頃、涙も収まり落ち着きを取り戻したところで、近くの椅子に座り、事の顛末を話してくれた。
あの位置情報はヒーロー殺しと遭遇して咄嗟に送ったもので、現場に着くと緑谷君と飯田君、そしてプロヒーローが襲われていたらしい。
救ける為に戦闘になり、その時に負傷するも何とか仕留める事が出来、直後に脳無が現れたけど色々あってその場は収まり、その後で救急車で運ばれたとの事。
そして、明日ちゃんと検査をする為、今日は入院することになったそうだ。
「そっか、うん。ちゃんと検査してもらった方がいいよ」
「一人で平気か?」
「大丈夫。無事だってわかったし。それに、何も言わずにここに来ちゃったから帰らないと」
「ああ、その事なら」
「あ、雪水さん落ち着いた?」
「え?緑谷君!?」
いきなり聞こえてきたクラスメイトの声に驚いてそちらを見ると、松葉杖をついた緑谷君の姿があった。
「雪水さんがここに来た時はすぐ近くにいたんだけど、気付かなかったみたいだね」
「あ…ごめん…」
轟君の事しか見えていなくて、周りにいたのが緑谷君だという事に気付かなかった。
もしやこれはとんでもない所を見られてしまったのではないだろうか。
「何だか凄く慌ててたみたいだし、気にしないで。それから、轟君に言われた通り連絡したらタクシー手配してくれるって」
「足怪我してんのに、頼んじまって悪ぃな」
「え?どういう事?」
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