第5章 原作編《ヒーロー情報学〜ヒーロー基礎学》
紫沫SIDE
エンデヴァーが敵を食い止めてくれている間に、先程襲われそうになっていた人達をここから避難させるのが私の役目。
「そこのお二人、こちらへ!安全な場所までご案内します!!」
「あなたはー…」
「ヒーローの卵です!」
それは咄嗟に出た言葉だった。
「大丈夫。エンデヴァーがあいつを倒してくれます。さァ安全なところへ」
現場から離れ、近くにいたサイドキックの人達を見つけて、一緒に避難誘導を続けた。
途中、エンデヴァーから連絡が入り、さっき食い止めていた敵を仕留めたから拘束と身柄引渡しをする様指示があった。
複数箇所で火事も起きていて、私の出来る限りの"治癒"を施し、必要であれば救急車の手配をする等、初めての現場では目の前の事をこなすので精一杯だ。
サイドキックの補助程度だったけれど、それでもこの経験は私にとってはとても大きい意味を持っていた。
警察も駆けつけ、辺りが徐々に落ち着きを取り戻していた頃、近くにいたサイドキックにある連絡が入る。
「スノークリスタルちゃん、俺らはここが落ち着いたらそのままホテルに戻る様指示が入った。エンデヴァーさんとショート君は別行動だ」
「え?どうしてですか?」
「二人はヒーロー殺しに鉢合わせたらしくてね、エンデヴァーさんは事後処理の為に、ショート君は救急車で運ばれたそうだ」
その言葉に視界が真っ暗になったかと思った。
心臓の音が煩くて、嫌な予感が頭を過る。
サイドキックの声音は至って冷静だったからそれはそんな大事ではないという事なのに、今の私にはそれを判断するだけの余裕がなかった。
「何処ですか!?何処に運ばれたんですか!?」
「え?えっと、保須総合病院って言ってたかな…って、スノークリスタルちゃん!?」
私は病院の場所がわかった途端にその場を走り出していた。
パトロール中にその病院のところも通ったから道は知っている。
無茶しないって言った、きっと無事だよね、何度もそう言い聞かせながら、どうしても拭い去れない大切な人を失う恐怖が私を襲う。
無我夢中で辿り着いた病院に救急車が停まっているのを見つけ、その近くにあった入口から中へと入った。
夜だから殆どの灯りは消えていて何処にいるのかがわからない。
その時、夜間警備の人を見つけ今運ばれてきた人達の行き先を聞いて、私は全速力でそちらへと向かった。
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