第5章 原作編《ヒーロー情報学〜ヒーロー基礎学》
紫沫SIDE
結局丸一日避け続けてしまい、このままでは良くないと思うも、なかなか気持ちの整理がつかないでいると、部屋の呼び鈴が鳴る。
こんな時間に一体誰だろうと覗き穴から外を見ると、そこには轟君の姿があった。
一瞬どうしようかと扉を開ける事を躊躇うも、部屋の中にいる事は知っているだろうから居留守をする事は出来ず、恐る恐る扉を開けた。
「…どうかした?」
「…少し話さねぇか?」
一拍置いてそう返ってきた言葉に少し悩み、私自身このままではいけないと思っていたので、何か解決の糸口が見つかるかもしれないと思う事にして、部屋の中へと招き入れる。
相変わらず顔を見る事はできなまま、轟君は部屋にあった椅子に座り、私はベッドへと腰掛けた。
暫く沈黙が続く中、先に言葉を発したのは轟君だった。
「…昨日は、悪かった。いきなりあんな事しちまって。今日一日、紫沫に避けられてやっと気付いた。嫌だったよな」
その言葉に真っ先に浮かんだのは否定の言葉だった。
「私の方こそごめん。そんなつもりじゃなかった…嫌だった、訳じゃない…」
「嫌じゃねぇのか?」
嫌ではなかった。けど、素直に嬉しいとも思えなかった。
「うん…」
「なら、何で避けてた?俺と顔合わせねぇ様にしてただろ」
きっと、今自分が気に掛けている事を言えば簡単に答えは返ってくる。そうすれば、問題解決だ。
でも、その答えを聞くのが怖くて、なかなか口を開く事が出来ない。
「言ってくんねェとわからねぇ。紫沫の思ってる事、教えてくれ」
「…私も、わからない。轟君が何であんな事してきたのか」
「紫沫の事見てたら触れたくなった。触れたらもっと欲しくなっちまってた」
「何で…」
「紫沫の事が好きだからだろ」
その言葉にあれだけ合わせられなかった顔を咄嗟に上げてしまい、ずっとこちらを見ていたらしい轟君と目が合ってしまう。
「やっと、こっち向いたな」
「あ…」
「嫌じゃねぇなら、何で避けてた?さっきのじゃ答えになってねぇだろ」
「轟君の、気持ちがわからなくて、ちょっと恥ずかしいのもあったし…どんな顔すればいいのか、わからなくて…」
「好きだ…紫沫の事が好きだ」
「っ…」
今度は恥ずかしさのあまり顔を合わせられなくなってしまった。
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