第5章 原作編《ヒーロー情報学〜ヒーロー基礎学》
紫沫SIDE
「待っていたぞ、焦凍。ようやく覇道を進む気になったか」
「あんたが作った道を進む気はねぇ。俺は俺の道を進む」
「ふん、まぁいい。小娘、体育祭以来か」
「はい…この度は受け入れて下さりありがとうございます」
「おい、体育祭って、なんの話だ」
「あ、たまたま会場で会っただけで、特には…」
体育祭で出くわした時の事はわざわざ話していなかった。
「"個性"の制御がまだ出来ていない様だが、それに関しては後だ。お前らも準備しろ。出掛けるぞ」
「…どこへ?」
「ヒーローと言うものを見せてやる」
いきなりの出動に私も轟君も少し驚いて、直ぐに動き出せなかった。
「前例通りなら保須に再びヒーロー殺しが現れる。しばし保須に出張し活動する!!市に連絡しろぉ!!」
「…ヒーロー殺し」
「どうかしたの?」
「いや、何でもねぇ。準備するぞ」
「そうだね、着替えなきゃ」
サイドキックの人に更衣室を教えてもらい、直ぐにコスチュームに着替え、保須市へと向かう。
少し離れている為、向こうに着くまで時間があった。
「コスチューム変えたんだね?」
「ああ、あのままじゃ左が使えねぇからな」
「そっか…うん、前のより格好いいよ」
「格好いい?そういうのはよくわかんねぇな」
その言葉で思った事がそのまま口に出ていた事にハッとした。
素直な感想ではあるんだけど、それを伝えてしまった事に少し恥ずかしくなるも、本人は特に気にした様子はなかった為、さり気無く話題を変える事にする。
「そう言えば、さっきと、電車乗る前に何か考え事してなかった?」
「考え事ってもんでもねぇよ。飯田の事が少し気になっただけだ」
「そう言われると、体育祭明けてから何だか様子が変だった…」
「ああ、変な気起こしてなきゃいいが」
「そうだね。ヒーロー殺し、早く捕まるといいけど…」
「…紫沫は両親を襲った敵の事、気にならねぇのか?」
「気にならないと言えば嘘になるけど、恨んだりとはちょっと違うかな…それに手掛かりが無さすぎて犯人の特定もまだ出来てないみたいだし。自分でもよくわからないんだ…」
「そうか」
本来なら、両親を殺されて恨んでもおかしくない筈なのに、何故かそうは思わなかった。
だからと言って、赦している訳でもない。
もしまた目の前に現れたらどうするかなんて、私にもわからなかった。
.