第5章 原作編《ヒーロー情報学〜ヒーロー基礎学》
紫沫SIDE
「良いじゃない!響きも綺麗だし。それに、何だかとても思い入れがあるみたいね?」
「あ、はい…そうですね」
これ以上その事に触れられたら恥ずかしさで顔が火照ってしまうと思い、急いで席へと戻る。
途中、どうしても轟君の席を横切らなきゃいけなくて、そこは見ない様にしようとしたけど、こちらをじっと見られていたみたいで、目が合ってしまう。
照れ隠しに少しだけ笑って見せると、あちらもほんの少しだけ目を細めていたのがわかった。
横を通り過ぎる時にそっと私にだけ聞こえる声で。
「クリスマスの時、だよな」
「うん…」
その言葉に同じ様に小さく返事をして、すぐに席に座る。
轟君が覚えていてくれた事に胸の辺りが温かくなった気がした。
その後、もう一度爆豪君が発表していたけど、結局それも却下され保留となり、ここで授業は終わりとなる。
「職場体験は一週間。肝心の職場だが、指名のあった者は個別にリストを渡すからその中から自分で選択しろ。指名のなかった者は、予めこちらからオファーした全国の受け入れ可の事務所40件。この中から選んでもらう。それぞれ活動地域や得意なジャンルが異なる。よく考えて選べよ」
「俺ァ都市部で対・凶悪犯罪!」
「私は水難に係るところがいいわ」
「今週末までに提出しろよ」
「あと二日しかねーの!?」
「それと、雪水は今から職員室まで来い」
「え?あ、はい」
いきなりのご指名に心当たりがなかったけれど、呼び出されたら行く以外の選択肢はなかった。
相澤先生の後を追う様にして職員室へと向かう。
「あの、どういったご用件でしょうか?」
呼び出される事にあまり良い印象がない私は恐る恐る言葉を口にした。
「職場体験の件だ。お前は既に行き先が決まっている」
「え?私、職場体験するんですか?」
「当たり前だ。一週間休めるとでも思ってたのか?そんな非合理的な事させるわけねえだろ」
「いえ、流石に休めるとは思ってないですけど…」
「で、お前の行き先だが、ここだ」
そう言って渡された紙に書かれた事務所の名前はーーエンデヴァーヒーロー事務所だった。
「…これは、一体どういう…」
まさか、NO.2のヒーロー事務所なんてこれっぽっちも想像してなかったのだ。
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