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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第2章 中学生編


轟SIDE


きっとそれは、自然に出てきた言葉なんだと思う。
特別な意味などなく、本来ならば感謝の意として受け止めるべきモノ。
けれど、俺にとってその言葉は特別な意味を持ち、心が騒つくのを感じずにいられなかった。
左手の…クソ親父の"個性"に救けられたなんて…
確かに左を使う事に躊躇いはなかったが。
それでも改めて左を意識することを言われると、反発心の様なものが芽生えてしまう。

「轟君?どうかした?」

そんな俺の気持ちが表情に現れていたのか。
雪水が少し不安気にこちらを見ている。

「いや、何でもねぇ…」

これは俺の問題でこいつは何も関係ない。
芽生えた感情からか。
無自覚に力が入り、左手をグッと握り締めていた。

「…」
「…」

それ以上交わす言葉がなくなり、無言の時が流れて。

「…そろそろ教室戻ろっか?お昼休みが終わっちゃうよ」

掛けられた声に、クソ親父のことは一先ず頭の隅に追いやった。

「そうだな」

雪水が背を向け歩き出そうとしたその時。
髪に何かついてるのが目に入った。

「あ、ちょっと待て」
「え?」
「そのまま動くな」

こちらに振り向きかけた雪水に静止するよう言うと、俺はそれを取ろうと髪に手を伸ばした。

(柔らけぇ…)

無意識だった。
ただ、髪についた何かを取ろうとしただけだったはずなのに、触れた先の心地良さに俺の手は雪水の髪を撫でていて。

「えっ、あの…轟君…?」

声をかけられことで、ハッとした。

「悪い。髪にゴミみてぇのがついてから取っただけだ」
「あっ、そうなんだ…ありがとう」

雪水は何故か俯いてしまい僅かに見える頬が仄かに赤らんでいるのが見えた。

「どうした?なんか顔赤くねぇか?」
「な、何でもない!私先戻るね!」

そう言うが早いか、あっという間に駆け出していき姿が見えなくなってしまう。
どうせ戻るところは同じで、そこまで急ぐ程の時間でもなかったはずなのだが一体どうしたというのか。
訳がわからないまま取り合えず俺も戻るかと教室へと向かい。
先ほど触れた髪の感触がまだ残る指先に少し違和感を感じつつも、奢ってもらったいちごオレを口に含んだ。



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