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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第2章 中学生編


紫沫SIDE


やっとお昼休み。
幼馴染との昼食を終えて、からかい半分のエールを送られながら彼の元へ向かうけど。
緊張で心拍数がどんどん上がっていくし、思うように足が進んでくれない。
それでもゆっくりと彼の席へと近づきながら何と声をかけるべきなのかを必死で考えていた。

(どうしよう…何も出てこない…)

緊張が焦りへと変わり、何も思いつかないまま後数歩で目的地に着いてしまうところで。
彼の目線がこちらに向き目が合った。

「…そういえば、飲み物奢ってくれるんだったな」
「あ、うん…」

未だに心拍数は上がったままだけど、彼のお陰で焦りは無くなった。
その代わりまたしても緊張に襲われて、もうここまできたら後は流れに身を任せようと。
椅子から立ち上がった彼はそのまま昇降口近くの自販機へと向かい始めたので、その後ろを慌てて私も追いかけ。
前回同様特に何を話すでもなく、無言のまま目的地に到着して。
その間に多少ではあるけれど心拍数は下がった気がする。

「轟君、飲み物何がいい?」
「いちごオレ」

聞き間違いだろうか。
彼のイメージからはほど遠いような単語に私は確認の意を込めて聞き返した。

「いちごオレ…?」
「ああ」
(…可愛い!)

聞き間違いなどではなかった。
その一言でさっきまで緊張していたのが嘘のように消え、彼の意外な一面を見れた気がしてなんだか嬉しくなって。
要望通りいちごオレのボタンを押し、出てきたそれを彼へ渡す。

「はい。昨日は本当にありがとう。轟君のお陰で病院送りにならずにすんだよ」
「先生もそんなこと言ってたな…キャパオーバーでそんな大事になんのか?」
「私自身あまり自覚はないんだけど、急激に体温が低下してそのまま仮死状態になるみたいなんだよね」

僅かだけど、彼が驚いたような顔をしていた気がする。
自覚がないだけにあまり危機感というものはないのだけれど、周りがとても心配するのでなるべく口外しないようにしていた。
だから普段はキャパオーバーしないよう気をつけているのだけど。
自分の不注意で巻き込んでしまったのだから、伝えるべきと思ったのだ。

「数日すれば体温が戻って目が覚めるから本当に死んじゃうことはないんだけどね。けど、あんなに早く目が覚めたのは初めて。轟君の"個性"に救けてもらったんだよ」


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