• テキストサイズ

【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第4章 原作編《体育祭》


紫沫SIDE


「わかった。もう離れねぇ…」

そう言って、一層強く抱き締められた。
それが嬉しくて、私もそっと腕を回してそこに力を込めた。
もう涙は止まっていて、徐々に平静を取り戻し始めた頃。
ふと、ある事が頭を掠め、気になったので少し身体を離し轟君の顔を見上げると。

「ねぇ、轟君?」
「なんだ?紫沫」
「前下の名前で呼んでなかったよね?今日ずっとそっちで呼んでるのは何で?」
「……苗字で呼んだら、また、合図になっちまうだろ」

その言葉に一瞬何のことかわからなくて聞き返そうとしたところで、わかってしまった。
しかも、顔が至近距離にあったことで、その先の事まで考えてしまい焦る。

「あ…えっと…」
「……ゆき」
「あ!私の話!するんだったね!!」

何故かわからないけど、轟君の言おうとした事を遮って話題を変えて。
慌てて轟君の腕の中から離れた。

「……そうだったな」

何だか悲しそうな顔をしているみたいで申し訳ない事したと思いながらも、変えた話題を続けて。

「えっと、轟君みたいに上手く話せるかわからないんだけど、実はちょっと色々あって、今違う所に住んでるんだ」
「電話でもそう言ってたな。どこに住んでんだ?」
「うん…あのね、睡さん…ミッドナイトの所にお世話になってる」
「は?ミッドナイト?」
「そう、相澤先生が言ってたでしょ?私の"個性"、制御が出来ないって。その関係でね」
「紫沫の"個性"は"雪"だろ?中学の時は普通に使ってたよな?」
「うん、それがね、中学の卒業式の日にある事件があって…」

この先の事を言うのにとても勇気が必要だった。
実を言うと、あの日の出来事を思い出すのは今でも怖くてたまに夜眠れなくなってしまう程で。
そんな時はいつも睡さんが"個性"を使ってくれて寝ている。
そして、この話をするのは今日が初めて。
幼馴染にも言っていなかった。

「ゆっくりで構わねぇから」
「ありがとう…卒業式の日に家に帰ったら…両親がね……敵に襲われてたんだ…」

嫌でもあの光景が脳裏を掠め、思わず膝の上に置いていた両手をギュッと握った。
それを見た轟君が優しくそこに手を重ねてくれて、その温もりに少しだけ気分が落ち着いた気がした。


.
/ 456ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp