第4章 原作編《体育祭》
紫沫SIDE
一旦電話を切り、学校近くにある自然公園で待ち合わせる事に。
少し外出をしてくると睡さんに伝えると少し興奮気味に見送られて。
過去に見た幼馴染のニヤニヤを思い出した。
「うっ…緊張する…」
轟君の住んでいる所よりもここに近いから自然と先に着いてしまったけど。
待つ時間分だけ緊張が増している気がした。
学校で話した時はそんな事はなかったのに、こう改めて話すとなるとやはり色々考えてしまって。
上手く言葉が出てくるかわからなくなってくる。
(そういえば、話がしたいって轟君が言ってたんだった。一体なんの話なんだろう…)
自分の事を説明する方が気になってしまいすっかり忘れていたけれど、今日の本題は轟君からだった事を思い出して。
そんな事を考えていた時だった。
「悪い、待たせたか?」
公園の入り口にあるゲートにもたれ掛かり下を向いていた私の頭上で声がした事で顔を上げると。
そこには久しぶりに見る私服姿の轟君がいた。
少し大人っぽくなったと入学した時に思ったけど、私服姿は更に大人っぽく見えて。
さっきまで考えていた事が全て頭から抜けてその姿に見惚れていた。
「…移動しねぇか?」
その言葉にハッと我に返ると。
見惚れている場合じゃない。
話をする為に会いに来たのだと言い聞かせてから。
「あ、ごめん。そんなに待ってないから大丈夫。中に行こっか」
「おお」
暫く無言のまま歩いて、公園の中にあるベンチが目に入り、そこに並んで座った。
再び緊張が私を襲い始め、何を話していいのかわからず無言が続く中。
「…母に、会ってきた」
先に口を開いたのは轟君で、その言葉に私はその真意が何なのかを直ぐに理解が出来なかった。
「母が病院に入ってからずっと会ってなかった。でも、今日会って話をした…緑谷の言葉がキッカケになってそうしねぇとって思ったんだ」
「そっか…」
何で私に話してくれるのかはまだわからなかったけど。
何だかとても嬉しくて、自然と笑みが零れて。
緊張は姿を消していた。
「それと同時に、紫沫の声も聞こえた」
「え?私の声…?」
あの時私は何も言っていない。
ただ、試合を見つめて泣いていただけだから。
全然見当がつかなかった。
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