第4章 原作編《体育祭》
紫沫SIDE
「睡さん、おはようございます。こんな時間まで寝ててすみません…」
「あら、おはよ。私もさっき起きた所だから気にしないで頂戴。折角連休なんだから、今日位はのんびりしなさい!」
程なくして、テーブルの上には遅い朝食が並べられた。
「頂きます!」
「召し上がれ!」
体育祭で忙しかったせいか。
こんなにゆっくりとした時間を過ごすのがとても久しく感じる。
「そういえば、睡さんも連休なんですか?」
「残念ながら、明日は出勤よ。プロからの指名の纏めをしなくちゃいけないの」
「…お疲れ様です」
先生と言うのは生徒が休みでも学校に行かなくちゃいけないなんて大変だな、なんて思っていた時。
テーブルに置いていた私の携帯が震え出した。
あまり鳴るこのない携帯に、誰からだろうと。
ディスプレイに目を向けて、そこに表示されている名前を見た瞬間。
私の心臓がドクンと音を立てたかと思う程に大きく飛び跳ねた。
(轟君!?)
その名前が表示される事はもうないとわかっていながら。
消す事が出来ずにいた連絡先は変わってなかったみたいで。
「どうしたの?電話みたいよ?……轟くん…?」
なかなか出られずにいたから睡さんにディスプレイを見られてしまい、慌てて携帯を取り自分の部屋へと駆け込んだ。
後ろの方で睡さんが何かを言ってるみたいだったけど、今はそれどころではない。
一度深呼吸をして、恐る恐る通話ボタンを押して。
そのままゆっくりと携帯を耳元に当てた。
「…もしもし」
『…連絡先変わってねぇんだな』
「うん。轟君も、変わってなかったんだね」
『ああ、変えると面倒だしな……今時間あるか?』
「今?えっと、どうして?」
『話が、してぇ。電話じゃなくて。会って、話さねぇか?』
その言葉に驚きから直ぐに返事をする事が出来なかった。
わざわざ休みの日に会おうなんて事を言われたのもそうだし、話がしたいと言われた事はもっとだ。
『少しだけでも構わねぇ。俺がそっちに行くから』
と、そこまで聞いて。
私がもうあの家にいない事を轟君は知らないのだと気付いた。
「あ!待って!あの、私今違う所に住んでて…」
『どう言う事だ?今何処にいる?』
「えっと…」
それこそ電話口で上手く説明する事が出来なくて。
会って話すからと、外で待ち合わせる事になったのだった。
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