第4章 原作編《体育祭》
紫沫SIDE
「心操君!」
「…雪水?」
「体育祭お疲れ様!緑谷君との試合見てたよ。心操君の"個性"初めて見たけど、あんな強い"個性"だなんて、全然知らなかった」
「強くなんてない。現に負けてるし」
「最後のは"個性"関係ないでしょ?緑谷君の方が対人戦闘の経験があったからだと思う。それと、ヒーロー目指してるのも知らなかった」
「どうしても諦められなかったんだ。今はまだヒーローを目指すには足りない物が多いけど、これからだから」
「うん。心操君ならなれるよ。なんたって、にゃんこのヒーローだもん!」
「前にもそんな事言ってたな…本当に変な奴」
「変な奴って、前にも言われた気がする」
お互いに同じ事を言っているのが少しおかしくて笑ってしまった。
心操君の表情は前に見た時よりも感情が表に出ているみたいで。
なんだか少し仲良くなれた気がする。
もし、心操君がヒーロー科に来ることになったらもっと仲良くなれるかななんて考えて。
そうなれるといいなって思った。
「心操君、ヒーロー科で待ってる」
「あァ、絶対入ってやる。雪水も悠長に構えてっと足元掬われるぞ」
「…うん」
その時、改めて自分には目指す物があるのかを少し考えた。
ヒーロー科に来たのはヒーローになる為じゃなかったけど。
この体育祭を通じて沢山の強い想いと皆のカッコいい姿に胸打たれたのは確かだ。
まだはっきりとした想いとまではいかないけど。
そんな皆と一緒に私もカッコよくなりたいって思わずにはいられなくなっている自分がいた。
「私も、これからかもね」
そう呟いた言葉は心操君には聞こえてなくて、きっと自分の中で確認したくて声に出してたんだと思う。
その後、下駄箱までは一緒に行ってそこで別れた。
家に着くと程なくして睡さんも帰ってきて、夕飯は出前を取って済まし、早めにベッドへと向かうと。
その日の夜は自分でもびっくりする位ぐっすりと眠れて。
目が覚めたのは翌日の正午頃だった。
「…寝過ぎた。睡さんは起きてるよね」
お世話になっている身として、休日は溜まった家事をこなす日であるのに早くも予定が狂ってしまった。
急いで着替えてリビングに行くと、やはり睡さんは既に起きていてご飯の準備をしてくれていた。
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