第4章 原作編《体育祭》
紫沫SIDE
ステージを見つめていると、場外に吹き飛ばされ、氷の上で気を失っている轟君の姿が目に入った。
「…は?は?オイっ…ふっ、ふざけんなよ!!こんなの、こんっ…」
同じく場内でそれを見つけた爆豪君は轟君の方へ近付き胸倉を掴むも、睡さんの"個性"によって眠らされてしまう。
「轟くん場外!!よってーー…爆豪くんの勝ち!!」
《以上で全ての競技が終了!!今年度雄英体育祭1年優勝はーー…A組爆豪勝己!!!》
こうして、体育祭決勝戦はなんとも歯切れの悪い終わりを告げたのだった。
コールの後、2人は搬送ロボによってリカバリーガールの元へと運ばれていく。
「っごめん!私ちょっと席外す!!」
気を失っていた轟君が気になり、リカバリーガールの元へと走った。
午前中にお世話になっていたそこに辿り着くと、真ん中をカーテンで仕切り、左右のベッドに横たわる2人の姿を発見する。
「はぁ、はぁ…っリカバリーガール、2人の容態は…?」
「心配するような事はないさね。轟は気を失ってるがすぐに目を覚ますだろう。爆豪は眠っているだけだよ。2人共外傷はそんなに酷くない」
「よかった…あの、少しだけここにいてもいいですか?」
「構わないよ。2人が起きるまでは表彰式も出来ないだろうからね」
そう言われ、私は轟君のベッドの側の椅子に座った。
言われた通りあまり外傷は酷くないみたいで安心する。
轟君が眠っている姿を見る事があまりないし、いつもは私が気を失って寝ているから、少し変な感じがした。
「…轟君、お疲れ様」
そう告げた時だった。
ゆっくりと轟君の瞼が持ち上がり、目を覚ます。
そして、こちらに気付きじっと見つめられているのかと思うと頬に手が伸びてきた。
「紫沫…泣いてんのか…?」
「…え?」
いきなり頬に触れた手と、またしても名前で呼ばれた事、そして何故か泣いていると思われたことに驚いた。
確かにさっき泣いていたけど、今はもうその形跡はない筈。
「…悪い。何でもねぇ」
そうして、触れていた手はすぐに離れて行ってしまった。
その手を名残惜しく思いながらも、先程口にした言葉と試合結果を目を覚ました轟君へと告げる。
「轟君、お疲れ様…最後、場外だったよ」
「…そうか」
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